欧州はこの時期に日がうんと長くなって多くの花が咲き始め、楽しい春と夏が始まる――。一年で一番良い季節なのです。日本と違って花粉症もそこまで激しくはありません。欧州の人々はこの季節と夏を楽しみに人生を生きていると言っても過言ではないのです。
しかし現状はそれとは真逆の状況になってしまいまいた。
「キリスト教的価値観」さえ崩壊した欧州
はじめのうちは、東洋で起こっていたこの“奇妙なウイルス”の話は、欧州の人たちにとってTVモニターの中の話題として伝わってきました。
自分たちとは人種も顔も違う人々が、政府の役人や秘密警察に殴りつけられている映像は、あくまで遠い国の話で、自分達の生活に関わることがないことだったのです。
ところが、その映画の中のような事柄が、突然自分たちの生活の中にも入り込んできてしまいました。
事前通告がほとんどない状態で都市が封鎖され、移動ができなくなってしまったのです。学校はもちろん、レストランやパブも閉鎖。街はまるで死んだようになっています。花が咲き乱れて太陽は燦々と輝いているのに、地中海の海はいつもどおり真っ青なのに、です。
地域によっては、スーパーマーケットの商品が品薄となり、まるで戦時中の配給状態になってしまいました。何時に並べといった指導はもちろん、店に並ぶ際も前の人と2メートル以上の距離をあけなければならない、などと厳しく言われています。入店のために1時間以上並ばなければならないこともざらです。人々は残りすくなくなった商品を取り合って、言い合いになったり、殴り合いになることもあります。
「隣人を愛しなさい」「寛容であれ」「ゆずりあいましょう」――などといったキリスト教的価値観が前提であるはずの欧州は完全に崩壊しました。