2015年12月に撮影された任志強。最近は白髪頭を短く刈り込んで、木工芸術家となった姿が報じられていた(写真:アフロ)

 4月7日、2200万北京市民が、コロナウイルスと同様に恐れおののく「特高警察」の中国共産党北京市紀律検査委員会・北京市監察委員会のホームページが、4日ぶりに更新された。それは北京市西城区の規律検査委員会・監察委員会が、最新の「調査」について公表したからだった。

 その本文は、たったの漢字52文字。以下の通りだ。

<北京市華遠集団の元共産党委員会副書記、董事長(会長)の任志強は、厳重な紀律・法律違反の容疑で、現在まさに北京市西城区紀律委員会・監察委員会の紀律審査と監察調査を受けている>

 一見すると、北京市の一企業の元幹部が、よくある公金の着服でもやったのかと思う。だが「任志強」という名前を見て、北京市民はのけぞった。「任志強って、あの『任大炮』(レンダーパオ)ではないか!?」

「大炮」とは、「大口叩き」の意味だ。拘束されたのは、「北京のトランプ」とも言われていた首都の元不動産王・任志強氏だったのである。

破壊力抜群だった「任大炮」

 任志強氏は1951年3月、北京に生まれた。父親は後に商務部副部長(副経済相)になるエリートである。現在の王岐山国家副主席とは中学校の同級生で、文化大革命の嵐が吹き荒れていた1969年、ともに陝西省の農村に下放された。同時期に、現在の習近平国家主席も陝西省に下放されているが、習主席と任氏の接点は不明だ。

 改革開放政策が定着した1980年代から、任氏は父親のコネをフル活用して、華遠経済建設開発総公司に入社し、頭角を現した。1993年に同社の総経理(社長)に就任し、2003年からは董事長(会長)も兼務した。