4月7日、バリ島の観光名所にもなっているヒンズー教のウルンダヌバトゥール寺院では儀式が執り行われた。訪れた信徒は、消毒室を通って寺院の階段を上っていった(写真:ロイター/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚智彦)

 インドネシアのコロナ禍はますます悪化している。そこでインドネシア政府は、4月7日、ジャカルタ州政府に対して、最も感染者が多い首都ジャカルタに「大規模社会制限(PSBB)」という実質的な「非常事態宣言」を適用することを認可した。これにより10日から、大幅な人、モノの制限が適用されることになった。

 同社会制限には明文化されてはいないものの、軍や警察が非常事態に際して治安維持目的で活動を強化する余地が残されている。そのため、市民の移動制限や集会やイベント解散、商業活動の禁止など、今後市民生活に治安当局が強権で介入する可能性も強く、市民の間には不安と不満が高まりつつある。

 またジャカルタでは、拳銃強盗や窃盗容疑者への私刑による殺人、群衆によるケンカが発生するなど治安が悪化する兆候も出てきており、PSBBの施行によって市民生活が円滑に回らなくなると、さらなる治安悪化が現実のものになるのではないかと、在留日本人の間にも不安が広がっている。

地方自治体の要請に応えたPSBB

 ジョコ・ウィドド大統領は、いわゆる「都市封鎖」や「非常事態宣言」、「夜間外出禁止令」などといった強制力を伴う感染拡大予防策の実施には消極的な姿勢を維持してきた。しかし「公衆衛生上の危機的状況」に対応するため、保健省による「社会活動の制限」という手段を使って実質的な「非常事態」の態勢を取ることで、地方自治体の不満を解消する道を選択したわけだ。