金正恩感染で何が起きるか

 医療崩壊に瀕するイタリアの医師の悲痛な叫びの中で、「すべての人工呼吸器は黄金に変わる」と証言している。

 治療薬が開発されていない中で、最後の頼りは人工呼吸器なのだ。金正恩氏専用の烽火(ボンファ)診療所に人工呼吸器はあるのだろうか。

 北朝鮮は、新型コロナウイルスに効果があると言われるゾフルーザ、アビガン、カレトラ、レムデシビル、オルベスコ(シクレソニド)などを、八方手を尽くして金正恩氏のために入手しているかもしれない。臨床試験も済んでいないのに。

 1987年、軍の最長老の呉振宇が交通事故で瀕死の重傷を負った際は、金正日は呉をモスクワまで空輸し助命した。

 もちろん、軍を慰撫し後継争いに勝つためだった。

 金正恩氏が新型コロナウイルスに感染すれば、北京、モスクワ、パリなどに移送するか医療専門家チームを招聘することはできるが、治療薬もないままに外国に頼っても詮無いことだ。また、秘密を守るのが難しいだろう。

人民の命は鴻毛よりも軽い

 1977年、日本赤軍が日航機をハイジャックした際に、当時の福田赳夫首相は「人の命は地球より重い」と言った。

 一方で、中国前漢時代の歴史家の司馬遷は、「死(命)は鴻毛(おおとりの羽根)より軽し」と言った。

 北朝鮮においては「金正恩氏の命は地球より重いが、人民の命は鴻毛よりも軽い」というのが現実なのだろう。

 今回の新型コロナウイルスの出現により、そのことが一層はっきりと示されるだろう。

 北朝鮮では一切秘密にされているが、新型コロナウイルスが伝播・拡大しているのは間違いないことだろう。

 飢餓に陥っている数百万以上の人民の命は鴻毛のように扱われる一方で、金正恩の命を守るためには、国を挙げて新型コロナウイルスに対する厳戒態勢をとっているというわけだ。

 そのような視点で、北朝鮮の新型コロナウイルス対処の有様を見れば理解しやすいのではないだろうか。