「自分の命」が惜しい金正恩
フランス国王ルイ14世が宣言した「朕は国家なり」という言葉は、絶対主義王制を象徴するものとして知られる。
ルイ14世は最高国務会議、顧問会議を主宰し、国内のいかなる独立的権力も容認せず、行政、統帥、外交の全権、さらには高等法院を自己の権威のもとに屈服させた。
北朝鮮の金王朝もブルボン王朝と同じで、金正恩氏自身が北朝鮮の体制そのものなのである。
北朝鮮の体制そのものである金正恩氏は
①クーデターや暴動などによって「王位」を奪われること(それは「死」を意味する)
②暗殺や新型コロナウイルスなどの疾病など「命」を奪われること
を恐れているに違いない。彼が最も恐れるのは「王位」よりも「命」の方であろう。金正恩氏の「命」は「公的な命」でもあり彼個人の「プライベートな命」でもある。
金正恩氏は中国やロシアとつながる航空便や鉄道の運行を停止し、韓国との交流窓口である開城(ケソン)の連絡事務所まで一時閉鎖し、新型コロナウイルスの流入に厳戒態勢を敷いた。
北朝鮮当局が過剰とも思われる対策を取って「一人の犠牲者も出すな」などと呼びかけるのは2つの目的があるのではないか。
第1は、飢餓状態で免疫力の落ちた「人民の命」の犠牲を最小限にすること。
第2には、金正恩氏の「プライベートな命」そのものを守ることである。