「一帯一路」で覚書を締結し握手をする中国の習近平国家主席とイタリアのジュゼッペ・コンテ首相(2019年3月22日、写真:ZUMA Press/アフロ)

(佐藤 けんいち:著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表)

 イタリアの感染爆発が止まらない。なぜ、中国から遠く離れたイタリアで新型コロナウイルスの感染爆発なのか? 

 今年(2020年)1月末にイタリアで最初に感染が確認されたのは、武漢から旅行に来ていた中国人夫婦だという。だが、もちろんそれだけが感染爆発の理由ではあるまい。もしそれが主たる原因であるなら、日本は今頃イタリアの比ではないはずだ。マスクやトイレットペーパ買い占め騒ぎどころでは済まないパニック状態だろう。

 日本では、新型コロナウイルスの検査体制が整っていなかったため、医療崩壊することなく現在に至っている。重症者を中心に医療体制を組むという優先順位が維持されているからだ。まったくもって、何が幸いするかわからないものだ。

 ところが、検査態勢が整っていたために、かえって医療機関に患者が殺到し、医療崩壊を引き起こしているのが韓国とイタリアだ。現在では、一時期は感染者数では上位にあった日本をはるかに抜いて、イタリアが中国についで感染者がダントツに多い状態となっている。

 イタリアでは、感染爆発を防止するために大都市だけでなく、非常事態宣言が出され、イタリア全土が「封鎖」(ロックダウン)されている。国外からの出入りは禁止、国内でも移動の自由が制限され、薬局や食料品店以外は営業禁止となっている。いったいどこの誰が、こんな事態になるなど予想できただろうか。

 最初に都市封鎖されたのは発生源の中国の武漢を初めとする主要都市だが、民主主義国家で封鎖されたのは、イタリアがはじめてのケースとなった。以後、スペイン、フランス、ドイツと欧州大陸各国に続いている。

21世紀の中国とイタリアの密接な関係

 イタリアで感染爆発が起こっている理由については、さまざまな説明がされている。ごく簡単に要約すると、こんな感じだろう。

●財政悪化による予算削減で、そもそも医療スタッフが不足していた。今回、イタリア全土で封鎖が実行されたのは、経済的に豊かなイタリア北部に対して、南部の医療システムが貧弱だという状況があるようだ。医療崩壊が起こったのは北部である。

●イタリアは2019年3月、G7加盟国では初めて「一帯一路」に参画する覚書を締結、これが民間レベルでも人の往来を加速化し、経済的な相互依存関係も促進していた。

●中国とイタリア両国は、2020年を文化・観光交流を促進する1年と位置づけ、1月にはローマで記念式典も開いていた。

●2019年にイタリアを訪れた中国人観光客は600万人を超えたという試算もある。

●しかも、イタリアに在住する中国人は、なんと40万人もいる。イタリアを代表するファッションブランドも、縫製関係に関しては中国人移民の労働に依存しているのが現状だ。