新型コロナウイルス感染が拡大するなか、バルコニーから励まし合うイタリア・ローマのアパートの住人たち(2020年3月15日、写真:ロイター/アフロ)

(酒井 吉廣:中部大学経営情報学部教授)

 イタリアは3月10日、北部諸州へ適用した移動制限(ロックダウン:Lockdown)をたった2日間で全土に拡大した。その後、EU各国も相次いでロックダウンの開始を発表した。

 イタリアの新型コロナウイルス感染者は、1月31日に中国人観光客2人が最初の陽性と発見されてから急拡大している。3月18日現在、感染者は3万5713人と中国の半分に迫る勢いで、死亡者は2978人とほぼ中国に並ぶ勢いにある。ちなみに、今週に入ると感染者が5割以上、死亡者は2倍以上と、医療崩壊と指摘されているとはいえ異常な増え方だ。なお、両方の人数は日本の876人、29人と比べて極端に多い。

 イタリアの中国系移民は32万人と日本の約半分に過ぎない(2018年)。中国人旅行者数も2019年で320万人と日本の3分の1強。武漢からの空港別旅行者数ランキングも、日本の成田(第3位)、関空(第7位)に対しイタリアの空港はトップテンに入っていない。イタリアに関係する中国人の数は対日比較で非常に少ないのだ。

 それなのに、なぜイタリアで新型コロナ感染者が急増し、また全土に迅速に移動制限を拡大したのだろうか。また、それは欧州全域に広がったロックダウンにも通じているのだろうか。

「一帯一路」で加速した中国とイタリアの往来

 2019年3月、習近平主席は200人強の随行員を連れてイタリアを訪問した。この時、イタリアは「一帯一路」に加盟し、4つの港を中国とともに近代化するとした。翌4月には李克強首相が具体的な話を詰めるために訪問し、中国交通建設股份有限公司や招商局の子会社等が建設に当たることとなった。

 これらを実質的に仕切ったジェラーニ経済発展省次官は、10年にわたり中国で経済を教えてきた中国通だ。

 4つの港はイタリア半島の東西に2つずつで、西側の2つは、ジェノヴァ(イタリア半島北西部)とパレルモ(シチリア島北部)。これはマルセイユ(フランス)、バルセロナ(スペイン)など地中海西部、およびローマ、地中海南部のアレクサンドリア(エジプト)などとの交易拠点である。