憧れの富士山 隔離中のダイヤモンド・プリンセス号デッキからの眺め (撮影:セルゲイ・ポポフ氏、以下同じ)

(ビクトリア・シパコフスカヤ:在モスクワ ビジネス・コンサルタント)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。急速な拡大が続いているイタリアやスペインなどの欧州だけでなく米国でも感染者数がうなぎ登りだ。

 どうすれば感染拡大を防げるのか。世界各国は頭を悩ませている。

 そうしたなか注目されているのが、2月4日に横浜に寄港した大型クルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号の2週間にわたる隔離措置だ。

 大型クルーズ船という特殊な環境、乗船客・乗員が多国籍にわたったことが注目を集めたが、それ以上に、感染がどのように広がって行ったのか、隔離措置は適切だったのか、検査体制は・・・など、自国の対策に参考にしようと注目されている。

 筆者はこのダイヤモンド・プリンセス号に一人のロシア人医師、セルゲイ・ポポフ氏が乗客として乗り合わせていたことを知った。

 ポポフ氏が2月5日から19日までの間、ダイヤモンド・プリンセス号内部での生活の様子をロシア国内の医師向けポータルサイト、ミールブラチャー(www.mirvracha.ru)に日々詳細にリポートしているのをたまたま見つけたのだ。

 ミールブラチャーは、日本人起業家 山本昭太郎氏が2012年にモスクワで立ち上げたベンチャー企業である。日本の上場企業エムスリーや日本のベンチャーファンドが出資している。

 同サイトはロシア国内の医師約37万人が会員登録しており、医師向けの医薬専門情報のほか、医師同士のフォーラムも設けられている。ポポフ氏はこのサイトへの常連投稿者であった。

 ポポフ氏はロシアのシベリア地方の主要都市、オムスク市で歯科医師として活動している。1952年生まれ(68歳)、46年間の歯科医師のキャリアに加え、オムスク国立医学アカデミーで20年以上教育にも携わった。

 そのほかにもポポフ医師は医学の世界に大きく貢献した医師に関する研究を行い、著作としてまとめたり、ネット上のブログで紹介したりしている。

 ポポフ氏はカムチャッカで生まれた。彼は子供の頃、カムチャッカから船に乗ってウラジオストクに何度も航海した。

 彼が覚えているのは大荒れのベーリング海、オホーツク海を過ぎて穏やかな日本海に入ると、遠くに見えた北海道の姿である。