そしてその一方で、距離の面で日本に近く輸送コストが相対的に安いロシアからの供給が新たに開始されている。ここにおいて、この5年間における「LNG供給源の地域的な多様化」の動きを見て取ることができる。
福島原発爆発事故を受けてLNGの日本向け供給量は増加へ
このようにLNG供給源の多様化が見られる一方で、地震発生後、LNG供給国から供給量増加の意向が表明されている。
LNG火力発電の稼働が増加することによって追加的に必要とされるLNGの量は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の石井彰氏によれば、2011年については年間300万~500万トンと見込まれる(石井彰「ポスト『福島』:本格的な天然ガス時代突入へ」)。
これに対し、例えばカタールの国営ガス企業であるカタールガス社は、今後1年間に400万トンの液化天然ガスを追加供給する旨を明らかにしている(4月16日付ロイター)。
また、インドネシア政府は、年内に計18カーゴ(約100万トン)を追加供給することを表明し(4月20日付時事通信)、オーストラリアのジュリア・ギラード首相も、4月21日の訪日時に液化天然ガスの安定供給を表明している(4月21日付毎日新聞電子版)。
ロシアもLNGの追加供給を表明
ロシアも、事故発生翌日の3月12日にウラジーミル・プーチン首相が日本向けLNG供給量を増加させるよう指示しており、さらにドミトリー・メドベージェフ大統領も3月14日に日本向けLNGの供給増を指示している。
これらの指示を受けて、国営ガス企業のガスプロムが4月と5月にそれぞれ10万トンずつ日本にLNGを追加供給する旨、イーゴリ・セチン副首相が表明している(3月14日付RIAノーヴォスチ通信)。
そして4月16日には、東京電力富津火力発電所のLNG基地に、ロシアが日本に追加供給するLNGの第1船が到着している(4月18日付読売新聞電子版)。
これら一連の追加的な供給により、当面の間はLNGの供給不足を免れる見通しとなっている。このことからLNGによる火力発電は、現在最も合理的な発電システムとなっている。
もちろん、LNGの価格も変動する。そのリスクはあるが、実は米国発のシェールガス革命によって価格も安定、原油のように高騰する危険性は薄い。その点については次回(明日)触れたい。
(明日につづく)