しかも、上記【表2】の総単価には、原発事故の際の被害額、被害補償額は含まれていない。福島第一原発の爆発事故に起因する被害額、被害補償額を含めて考えれば、原子力発電は経済合理性に全く欠ける発電方法であることが分かる。

 そのため、安全面のみならず経済面からも、原子力発電から他の発電方法へとシフトすることが火急の課題であると言えよう。

夏に向けて増強されるLNG火力発電

 さて、電力需要がピークを迎える夏に向けて、長期計画停止されていた火力発電所の運転再開や定期点検からの復帰(約490万kW/h)、震災によって運転が停止した火力発電所の復旧(約810万kW/h)など、主に火力発電所の運転再開・復旧等によって、東京電力は夏の需要ピークを乗り切ろうとしている(「週刊東洋経済」2011年4月30日-5月7日号、37ページ)。

 上記の既存施設の運転再開・復旧以外に注目されるのは、LNGを燃料とするガスタービン発電設備の増強である。

 4月16日付毎日新聞朝刊は、「東京電力は15日、7月末で5200万kW/hの電力供給能力を確保できる見通しになったと発表した。ガスタービン発電機の新設などで、従来見通しの4650万kW/hから550万kW/h上乗せする」と報じている。

 また、上記「週刊東洋経済」によれば、夏にかけて増設されるガスタービン発電の容量は約60万kW/hになるとのことである。

 このように、新規発電設備の増強面ではガスタービンが主流になっているが、ガスタービンが主流になる要因として、LNGを燃料として相対的に発電コストが安いという点だけでなく、短期間で設置が可能であり、かつ稼働後に出力が柔軟に調整できる点も指摘できる。

燃料電池という選択肢

 ところで、電源を再生可能エネルギーにシフトする過渡期において、天然ガス火力発電以外に注目すべきエネルギー源として、「燃料電池」という存在がある。

 これは、水素と酸素の化学反応を利用して発電を行うものであり、近年になって家庭用の装置も市販されるようになった(商品名「エネファーム」)。

 最新の大規模火力発電所では、石油や天然ガスが持つ1次エネルギーの50%を電力に変換するが、送電ロスも発生するため、最終的なエネルギー効率は37%となる。