何個の恒星を探索すれば、生命の発生した惑星を見つけられるか
戸谷教授の試算では、生命の発生する惑星には水溜まりが無数にあって、そこでRNAが生産されると仮定します。35億年前の地球と似た状況です。隕石がその惑星に降り注ぐことによって、炭素質隕石に微量に含まれる塩基が水溜まりに供給されます。水溜まりの中では化学反応が起き、塩基が1個、2個、3個とつながって、RNAを作るというシナリオです。
利用できる塩基の総量や、どれほどの速さで塩基がつながれるかといった数値の見積もりは、結構な不確定性を含みますが、この発表によれば、生命発生の確率は極めて小さいという結論にさほど影響しません。100倍や1万倍くらいその辺の値が違っても、やはり生命発生確率は絶望的に小さいのです。
結論に大きく影響するのは、例えば、自己複製能力のあるRNAを作るのに必要な塩基の個数です。ここでは40個と仮定しています。塩基40個をランダムにつなげてRNAを作り、そこから自己複製能力のあるRNA(たぶん1種類くらい)が生じる確率を計算します。
もうひとつ重要な仮定は、長いRNAは作りにくいということです。ちょっと専門的な表現だと、つながる塩基の個数が「ポアソン分布」に従うという仮定です。
言い換えると、水溜まりの中でできたRNAのほとんどは2個か3個の塩基からなるということです。塩基4個のRNAは少なく、5個はもっと少なく、40個ともなるとたいていの水溜まりには見つからないほど希少でしょう。これはかなり生命発生に厳しい条件です。
さらに、恒星が地球と似た惑星を持つ確率や、RNA生産に適した状況が続く期間などを考慮すると、「何個の恒星を探索すれば生命の発生した惑星を見つけられるか」が計算できます。生命発生の確率が低いほど、多くの恒星を探索しなければ、生命は見つかりません。
戸谷教授によると、その数は10^39個という莫大なものになります。これは宇宙の観測可能な範囲に存在する恒星の数より多いです。