しかし、政府の最優先事項は、国民の生命財産を守ることである。中国に対する遠慮があるにせよ、国民の生命を最重要視するべきではないのか。中国に対する弱腰姿勢の結果、新型コロナ肺炎の韓国への蔓延を許すようなことになれば、国民は決して文政権を許さないであろう。

 現在、韓国国民の間では、「韓国の中国重視姿勢のせいで、中国は韓国を軽視しているのではないか」との疑問が持たれるようになっている。例えば、同胞救出のためのチャーター機の派遣を韓国は日米に先立ち中国に申し入れたが、中国は日米を優先させたと批判されている。中国にしてみれば、日米には気を遣わざるを得ないが、韓国は黙っていても言うことを聞くという思い込みがあるのだろう。これも文政権の中国従属姿勢の弊害であるが、国民からは「韓国政府は中国にすり寄って何をしているのか」との批判が出ている。

 文在寅大統領が中国にすり寄る姿勢を示す大きな理由の一つに、今年3月に習近平国家主席の訪韓を何としても実現させ、その成果を4月の国会議員選挙に活用していこうとする文在寅氏の思惑がある。習近平国家主席が訪韓してくれる際には、THAAD(高高度防衛ミサイル)の韓国配備にともなう中国の報復措置である「限韓令」の排除など、何かしらの土産を持ってきてくれるだろうとの期待感もある。

 しかし、新型コロナ肺炎はこうした文政権の期待を台無しにしようとしている。中国では3月に全人代が開かれる予定であるが、その前に中央・地方の各級単位別に人民代表大会を開き準備する必要があるが、これがコロナへの対応で遅れることは避けられず、「全人代延期説」が飛び交っている。そうした中、習近平主席の訪韓など現実的に可能だろうか。老婆心ながら、そろそろ韓国国内の期待感をトーンダウンさせていった方がいいのではないか、と心配してしまう。

 第一、韓国国民の多くは中国が嫌いである。王毅外相が韓国を訪問した時のような横柄な態度には辟易している。そうした中、文政権は中国に過度に気を遣っていながら、韓国政府の弱腰姿勢だけが目立つ結果となっている。

致命的ダメージになりかねない新型肺炎

 文在寅政権の失政の中でも、韓国国民が最も痛手を感じるのは経済の停滞、失業の増加であろう。文政権は、正規職の減少を高齢者の細々とした財政支出によるアルバイトの創出などで繕っており、数字合わせをしているが、現実に就業状況の悪化を体感している人は多いだろう。

 昨年一年間のGDP成長率は2%であった。しかしそのうち、公的部門の貢献率が1.5%であって、これで民間部門の0.5%をカバーしたのである。民主化以降の韓国で成長率が1%台にとどまったのは、世界的な経済不況のあおりを受けたときの3回のみだ。昨年はそうなることを避けるため、なんとか財政支出によって免れたというわけだ。それほど経済状態はよくない。