武漢に住む海外同胞の帰国措置をめぐり、一日のうちに韓国政府の公式立場は二転三転した。帰国者の収容施設を巡っては地域住民の反発を招くと収容先を変更した。政府内、政府と地方自治体の意思疎通の乱れも混乱に拍車をかけた。

 3日に丁世均首相が主催した対策会議後に発表した緊急対策に「中国人対象の韓国ビザ中断」「韓国国民対象の観光目的の中国訪問禁止案」を含めたが、2時間後にはこれを検討対象に格下げした。民間では、「中国に対する全面入国制限など強い対処を要請したが、韓国政府の対応は遅い」との批判が出ている。韓国も、湖北省渡航歴の有する外国人の入国制限などは課したが、国民が入国制限の一層の強化を求めているのは、政府の対応に対する不信があり、水際でこれを抑える以外ないと考えているからであろう。

 韓国で23人目の陽性患者となった中国人女性は、発見されるまで15日間ソウル市内を闊歩していた。この女性は武漢から入国し、連絡がなかった外国人65人のうちの1人で、2月5日にようやく発見されたが、その翌日には感染患者と判定されていた。

 彼女の感染が確定する直前の5日間に訪れたプレジデントホテル、ロッテデパート本店、Eマート麻浦孔徳店などは3日間休業することになったと報じられている。ただし政府が公開したのは彼女の最後の5日間の動線のみ。それ以前10日間については公開していない。このようなことで、国内における二次感染、三次感染を防げるのであろうか。

 MERSへの対応のまずさに懲りて、文政権は確かに真剣に取り組んではいる。しかし、国民の意識はさらに進んでいる。新型コロナ肺炎とは無関係の学校が休校になっているというくらい過剰な反応である。国内感染が広がっていったときには文政権にとって致命傷になりかねない。

中国に対する弱腰姿勢が改めて露呈

 新型コロナ肺炎でも、韓国の中国に対する弱腰姿勢、中国の韓国軽視姿勢が明らかとなっている。大統領府のホームページに設けられた「国民請願掲示板」には、韓国国内から「中国人入国禁止」の請願が続いているが、青瓦台は否定的である。

 ケイ海明新駐韓中国大使は、新任の記者会見で「中国との旅行、交易制限に反対するという世界保健機関規定に符合する決定を期待する」と述べ、韓国政府が中国人の入国制限をしないよう求めた。どの外国人の入国を認めるかは主権事項であり、韓国政府は新任の中国大使のコメントこそ批判すべきである。ハリー・ハリス駐韓米大使が、北朝鮮に対する韓国人の個別観光を認めるにあたり、協議を求めたときには主権事項であると言って拒絶しておきながら、中国に対しては何も言えない。

 こうした対応は、「過去の米国、日本との関係は恥ずかしい従属」であり、「わが民族の運命は自ら決めなければならない」のだが、「韓中は運命共同体だ」(いずれも文大統領発言)という左派運動家の思考方式が表れている。