(朴 承珉:在ソウルジャーナリスト)
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長の叔母であり、故・張成沢(チャン・ソンテク)元朝鮮労働党行政部長の夫人・金敬姫(キム・ギョンヒ)元党政治局委員兼書記が公の場に登場した。約6年ぶりだ。
だが北朝鮮の高位脱北者らは、この人物は金敬姫本人ではなく「代役、つまり『影武者』だ」と主張する。
確かに、北朝鮮では過去に、金日成(キム・イルソン)主席の影武者が3人、金正日(キム・ジョンイル)総書記の影武者も存在したとされている。金日成主席の影武者は若い時代と1960年代、そしてその後の時代の影武者がいたと言われる。
だが、金日成の娘であり、金正日の実妹である金敬姫氏の影武者説は筆者も初耳だった。
「影武者説」を確信する高位脱北者
北朝鮮のメディアは1月25日、平壌の三池淵劇場での旧正月記念公演において、金委員長と李雪主(リ・ソルジュ)夫人、金委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長とともに、金敬姫元書記が観覧する姿を伝えた。
これが衝撃を持って伝えられたのは、金敬姫氏は、夫で北朝鮮のナンバー2とされた張成沢氏が2013年12月に処刑された後に、死亡したとされていたからだ。死んだはずの金敬姫氏が存命だったということは、北朝鮮の権力構造や行動原理を探るうえで、極めて大きなニュースだった。