(PanAsiaNews:大塚 智彦)
中国湖北省武漢からもはや世界中に拡大しようとしている新型コロナウイルスによる肺炎。東南アジア諸国連合(ASEAN)各国でも次々と中国人旅行者の感染者が報告されているが、中国に渡航歴のない各国国民の感染も増えている。
とはいえ何事にも多種多彩で一筋縄でいかないASEAN各国だけに、新型肺炎に対する対応も中国に極端に気を遣う「媚中国」から、水際対策強化で中国人の入国禁止や武漢からの旅行者を“強制送還”する「強硬国」まで両極端に分かれている。さらにその間に入って中国や国際社会の動向を見極めようとする「様子見国」、自国での感染者がこれまでゼロであることから感染阻止に自信を見せる「自尊国」と千差万別。各国の国柄、政権の立ち位置、国民性を如実に反映している。
日本では「新型肺炎」という用語がマスコミなどでは定着してきているが、ASEANでは英語の「WuhanVirus(ウーハン・ウイルス=武漢ウイルス)」が呼称として広く使われるようになってきた。この背景にはあくまでも中国・武漢を発生地とする新型のコロナウイルスによる肺炎であることを記憶しておこうとの思いがあるようだ。
「現地に残れ、恐怖心が病」とカンボジア
2月3日正午時点で中国人の感染者1人が確認されているカンボジアはASEANの中で特に中国との関係が深い。野党指導者を逮捕したり、野党支持者、マスコミへの弾圧を続けたりしてASEAN内で孤立しているフン・セン首相だが、多額の経済援助を受けている中国という後ろ盾があるためASEANの視線も全く意に介さずに「独自路線」を歩んでいる。
地元紙「カンボジア・デイリー」によると新型肺炎に関してもフン・セン首相は1月30日に「恐れる必要はない。なぜならカンボジア人は誰一人として感染していないし、死亡もしていない。恐怖こそが病のもとである」と発言。
中国からの乗り入れ航空便に関しても「経済への悪影響や対中関係を考えて運航中止などはするべきでない」との姿勢を強調した。