(篠原 信:農業研究者)
「伊賀にある豆腐屋さん、おいしくて。三越にも商品を出したりしていて。でも高齢になって廃業するんですって。後継者はなし。あの味が失われるなんて、もったいない」
ああ、ここでもひとつ職人技が失われていくのか、と寂しくなった。
人材難で消えゆく職人技
知る人ぞ知る職人が、高齢になったのを理由に廃業する話はテレビでもよく取り上げられる。後継者がいない、という話が必ずと言ってよいほど付随する。その人の製品は高く評価され、お客さんもしっかりついていて、経営も安定しているのに、それを継ぐ人がいない。いかにももったいないし、残念だ。
藻谷浩介さんの本の中に、甲冑の修繕をする職人の話が出てくる。甲冑は一定の手堅い顧客層がいるらしく、修理依頼がひっきりなしで人手が足りないのだという。しかし後継者難。田舎で仕事がないといって若い人は都会に出て行ってしまうけれど、田舎には職人という、誇り高く面白い仕事がある。なのに、後継者をみつけることができない。若者もその存在になかなか気づくことができない。