東京オリンピック・カウントダウンクロック発表会に出席した小池百合子都知事(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

(黒木 亮:作家)

 これまでたびたび週刊誌などでも取り上げられながら、決定的な証拠を突き付けるまでには至らなかった小池百合子・東京都知事の「学歴詐称疑惑」。アラビア語やエジプト事情に疎い日本のメディアは小池氏の学歴詐称疑惑の追及に消極的で、このままでは、この疑惑は、永遠に疑惑のまま終わってしまうかもしれない。

 小池氏の「お使い」レベルのアラビア語を聞けば、カイロ大学卒業という学歴は即座におかしいと分かる。筆者はアラビア語を学び、エジプトの大学(カイロ・アメリカン大学大学院中東研究科)を卒業した者の責務として、複数回の現地取材を含む調査で疑惑を徹底検証した。その結果、小池氏がカイロ大学の卒業要件を満たして卒業したという証拠、印象、片鱗は何一つ見出せなかった。

 これまで他のメディアが報じてこなかった小池氏の「学歴詐称」を徹底検証するレポートの第2弾をお届けする。

(参考記事)徹底研究!小池百合子「カイロ大卒」の真偽〈1〉
「お使い」レベルのアラビア語

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5884

「卒論制度なし」の説明は事実ではなかった

 小池氏の学歴の真偽を判断するにあたって、氏のアラビア語のレベルと並んで非常に重要と思われるのが、卒論の件である。石井妙子氏の「小池百合子『虚飾の履歴書』」(『文藝春秋』2018年7月号、以下『虚飾の履歴書』)によると、小池氏は、卒論の内容についての質問に対し、弁護士を通じて「当時カイロ大学では論文試験制度はなく」と回答したという。

 卒論の有無は、学部、学科、業年度によって異なるのは、日本もエジプトも変わらない。1973年に文学部アラビア語学科を卒業した小笠原良治大東文化大学名誉教授は卒論をアラビア語で書いて提出し、審査を受けて卒業したという。一方、筆者が会った政経学部の日本人卒業生や2003年の商学部の卒業生は、卒論提出の義務はなかったそうである。

 筆者は、小池氏が卒業したとしている1976年当時の文学部社会学科ではどうだったかを確かめるため、カイロ大学文学部社会学科を訪れて話を聞いた。その回答は「社会学科では1976年当時、卒論が必須で、現在もそれは変わらない」というものだった。