(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)
インテルが“謝罪”の書簡を公表
インテルのエグゼクティブ・バイスプレジデント、ミッシェル・ジョンソン・ホルタス(Michelle Johnston Holthaus)氏は2019年11月20日、PCメーカーやサーバーメーカーなどのプロセッサのカスタマーにあてた書簡「Intel Supply Update」を公表した。
インテルはPC用プロセッサで約80%、サーバー用プロセッサで約96%のシェアを独占している世界最大のプロセッサメーカーである。
サーバーとはデータをストレージするための専用のコンピュータで、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなど、クラウドメーカーが競って建設しているデータセンタに大量に使われる。
ところが、2016年に10nm(ナノメートル、1nmは1メートルの10億分の1)プロセスの立ち上げに失敗したことが原因で、2018年以降、需要に見合うプロセッサを供給できない状態が続いていた。
このような中、2019年5月に行われた投資家向けミーティングで、「当社の10nmプロセッサは、これまで出荷予定に遅れが生じていたが、今回は、2018年に発表したスケジュール通り、2019年6月に出荷を開始できる見込みだ」と説明し、2019年後半にはプロセッサの供給不足が解消できる目途が立ったことをアピールした(EE Times Japan「10nmプロセッサも19年6月に出荷:Intelが7nm開発にメド、2021年に市場投入を予定」2019年5月13日)。
しかし残念ながら、インテルは上記計画通りに10nmプロセッサを製造することができず、そのカスタマーに対して上記書簡を公表し、“異例の謝罪”を行うとともに、TSMCやサムスン電子などに、プロセッサの生産委託を行う”異常事態“に陥った。
本稿では、まず、10nmプロセスの立ち上げに失敗したインテルがなぜプロセッサの供給不足に陥ってしまったのかを説明する。次に、インテルのプロセッサ供給不足が半導体メモリの大不況を招いてしまったことを論じる。そして、2020年においても、インテルはプロセッサを十分供給することができず、したがって半導体メモリ不況は当分続くかもしれないことを指摘する。