昔と大きく変化したのは、自営業者が少なくなってしまったことだ。2000年には1100万人いた自営業者が、2018年には700万人へと激減した。その代わりに増えたのがサラリーマンなどの勤め人。昔は商店街もそれなりに元気で、酒屋や食料品店の店長が「ヒマしているならうちを手伝ってよ」などと言って、「第三者」が声をかけてくれることもあった。学校以外の場所で第三者と関係を結ぶことが可能だった。

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 しかし、ほとんどの人が勤め人になった現代では、会社の中に大人たちは引きこもり、出会うことすら難しい。学校に通えなくなると、第三者と関係を結ぶ方法が見当たらなくなるのが、現代の日本だ。

専門家も「親の頑張りで」

 ある日、不登校の問題に詳しい専門家の講演があると聞いたので、最新情報を仕入れようと参加した。非常に優しそうな表情、柔らかな語り口。なるほど、たくさんの不登校の子どもや親の相談に乗ってきただけあって、とても柔和なお人柄だと拝察した。

 しかし私は、話を聴くにつれて猛烈に腹が立ってきた。講演を私なりに要約すれば、「子どもはなんとか学校に行かせなさい、学校に行かないのは親の接し方、話し方に問題があるからで、親自身がひたすら反省しなければならない」という話だった。つまり「不登校は親が原因」と言っているわけで、それを解決できるか否かも親次第、という話だった。あまりに腹が立ったので、講演の途中で「第三者はどこにいったのですか!」と声を上げてしまった。

 講演終了後、非礼を詫びつつ、なぜお話の中に親と学校、専門機関しか登場しないのか、なぜ第三者の力を借りようとしないのか、訊いてみた。

「昔のご近所の力ですね。私もそれがあればもっと話はラクなのに、と思います。でも今の日本では、それを望むべくもありません。だから親に頑張ってもらうしかないし、専門機関に相談するようアドバイスするほかないのです」という答えだった。

 親や教師、専門機関といった「関係者」しか子どもに関わる装置が、今の日本にはない。いまさら、第三者に関わってもらうことが期待できない。そうカウンセラーの方は本音を漏らした。