中国・甘粛省を視察した習近平国家主席(2019年8月21日、写真:新華社/アフロ)

(澁谷 司:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・拓殖大学海外事情研究所教授)

 最近、中国の一部の図書館で焚書が開始されたという。今の時代に焚書とは驚きである。時代錯誤もはなはだしい。

 事の発端は、今年(2019年)10月15日、中国国家教育省基礎教育課が、各関連部署に、ある通達を出した事に始まる。

「全国小・中・高校図書館図書の審査・整理について特別行動展開に関する通知」である。それは違法な本を断固として整理し、流通を止め、保管することを要求している。

 もう少し具体的に言えば、国家の統一・主権・領土保全を危険に晒すような書籍、政党史、国史、軍事史を歪曲する書籍、また、共産党の宗教政策に違反する書籍、社会主義の核心価値観に合致しない書籍、偏狭な民族主義と人種主義を標榜する書籍などは、すべて整理の対象で、一掃しなければならないという。

 しかし、出版物は本当に焼却されなければならないのかという疑問が残る。また、何が国家にとって危険なのか、何が歴史の歪曲なのか、何が党の宗教政策に違反するのか、何が社会主義の核心価値観に合致しないのか、その線引きが極めて曖昧である。

 実際、この通達を受け、新疆ウイグル自治区イリ・カザフ自治州で、学校が生徒に対し、カザフスタンの読物を学校側に提出するよう強いられている。