「エビに優しい」養殖技術、日本から世界へ

世界を渡り歩くグローバル食材、エビ(後篇)

2019.10.18(Fri)漆原 次郎

 国際農研でワイルダー氏とともにエビの研究をする姜奉廷氏が、エビの眼柄切除の歴史を説明してくれた。

「1940年代に、眼をなくしたエビが生殖しやすいということがたまたま見つかり、眼に卵成熟を抑制する物質があるのではと研究が始まりました。1970年代に技術化され、それ以来エビの養殖産業が大きく発展しました」

 特にクルマエビ科は生殖リズムが不規則であるため、人為的な眼柄切除による卵の成熟が促されてきたのだという。

 だが、眼柄切除には問題がある。姜氏は「手間がかかる上に、眼を切って2~3カ月すると成熟しなくなるため、次々と新たなエビで眼柄切除をしていきます。効率がよいとはいえません。それに、近年は動物福祉の観点でも、こうした技術でつくられたエビを食べないとする消費者の動きが出てきています」と話す。

 こうして「眼柄切除ではない方法でエビの卵成熟を促すこと」が、研究課題となった。

RNA干渉法で、成熟化に挑む

水産生物飼育実験室。研究対象のバナメイエビは、成長が早く、病気に強く、味もよいことから世界的に市場が拡大しており、東南アジアでもバナメイエビの養殖場が増えている。実験室ではテナガエビ科のオニテナガエビという淡水性のエビも飼育し、研究対象としている。

 国際農研の研究チームは基礎研究を重視している。エビの体内で放出されたホルモンが、どのような経路をたどって体に変化をもたらすのか、そうした経路の研究も重ねてきた。経路の全体像を把握しておくことは、エビの成熟を促す新たな方法を検討するうえで重要となる。

 卵黄形成抑制ホルモンの働きで卵の成熟が抑制されてしまうことは上述のとおりだ。研究チームは、数種類ある卵黄形成抑制ホルモンのうち、主要な働きをするSGP-Gというホルモンに着目し、この遺伝子の発現をブロックすることを企てた。

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