「エビに優しい」養殖技術、日本から世界へ

世界を渡り歩くグローバル食材、エビ(後篇)

2019.10.18(Fri)漆原 次郎

「遺伝子の発現をブロックすれば、抑制ホルモンはつくられませんからね。“抑制を抑制”しようということです」(姜氏)

 SGP-G遺伝子の発現をブロックする方法として、研究チームは「二重鎖RNA干渉法」という技術を用いることにした。ブロックしたい遺伝子と対応関係にある2本鎖のRNA(リボ核酸)を細胞内に入れることで、その遺伝子から写し取られるmRNAを分解させてしまうという方法だ。mRNAは、ホルモンがつくられるまでの過程で必須なため、これがなければ卵黄形成抑制ホルモンがつくられることはない。つまり、眼柄切除とは異なる新たな方法で、卵成熟の抑制をブロックさせられるわけだ。

 実際、研究チームはバナメイエビに二重鎖RNA干渉法を施して、卵成熟などの効果を調べてみた。

「成熟の早さという点では、眼柄切除のほうが先に効果が出ます。けれども、私たちの方法では、眼を切除しないため、たとえ成熟のタイミングが遅くなっても、長期的に見ればエビが元気に卵をつくりつづけられる可能性があります。より長期にわたって飼育できる養殖現場で、それを検証する必要があります」(姜氏)

 新たな方法の成果が実証されれば、実用化に向け一歩前進となる。だが、本当に実用化されるには、研究者たちでなくエビ養殖業者たちが新たな方法を簡便に利用できるようになることも必要だ。

「どの養殖法でもそうですが、現場の人が簡単に使えるようでなければ普及はしないと私たちも認識しています。今回のRNA干渉法も含めた簡易なシステムを実現させ、養殖業者には養殖の助けになり、消費者にはエビに優しい技術と思ってもらえるようになればと考えています」(ワイルダー氏)

 今後は、こうした実用化を見据えての研究を進めるとともに、卵成熟などを「促進」するホルモンや経路の解明といった基礎研究も進めていくという。エビの養殖は国際的なビジネスだけあって、研究成果の波及効果は大きなものになりうる。

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