日本人に縁の深い食材「エビ」に光を当てている。
前篇では、日本人がエビとどう接してきたか、その歩みをたどった。戦後、エビの消費量は急増したが、その要因のひとつとして、日本人研究者によって確立されたエビ養殖技術が世界的に普及し、世界から日本へのエビの輸入が増えたという経緯があった。日本のエビは、もはや世界との関わりなしでは語れないものとなっているのだ。
後篇では、エビの養殖関連技術をめぐる先端研究を伝えたい。国際農林水産業研究センター(国際農研、茨城県つくば市)では、養殖エビの産卵や成熟を誘導するため行われてきた「眼柄切除(がんぺいせつじょ)」という方法に代わる技術の開発が進められている。実用化されれば、国内外での種苗の安定供給や、動物福祉の観点での問題解決につながりそうだ。
海エビを淡水で育てる技術で陸上養殖を実現
国際農研は、熱帯・亜熱帯地域や開発途上地域における農林水産業の技術向上に向け、試験研究などを行う国立研究開発法人。世界の食料問題や環境問題の解決、また農林水産物の安定供給などに貢献することを目指している。
エビ関連の研究でも大きな成果を上げてきた。そのひとつに、「バナメイエビ」というクルマエビ科の「陸上養殖」実現化がある。
クルマエビ科の養殖は、海沿いのマングローブ林などを切り開いて行われる。だが、この方法は海洋汚染などを引き起こし、また、エビの伝染病や悪天候による供給不安定といったリスクを抱えるものでもある。
そこで、エビ養殖場を海上でなく陸上につくり、閉鎖循環式のシステムでバナメイエビを養殖するプロジェクトが行われた。バナメイエビは海の生きものだが、衛生的に管理できる淡水化養殖技術の開発により、陸上養殖への道を切り開こうとしたのだ。