(舛添 要一:国際政治学者)
北朝鮮は、10月2日朝、東海岸から1発のミサイルを発射し、日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下させた。3日、北朝鮮は、発射したのはSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の「北極星3型」で、発射実験は成功したと発表した。
今回の発射は、今年5月以降では11回目にあたり、とくに米朝実務者協議が5日に開催されることが決まったばかりのタイミングである。その裏には、北朝鮮の様々な思惑があるようである。
「SLBM実験中止」を餌にトランプを揺さぶる北朝鮮
トランプ大統領は、これまでの度重なる北朝鮮のミサイル発射に対して、短距離ミサイルだとして容認する姿勢を貫いてきた。今回のSLBM発射については、3日、記者団に対して「どうなるか見てみよう。彼らは話したがっている。われわれは彼らと話す」と述べて、対話姿勢を貫く意向を示した。また、北朝鮮も、金正恩委員長の立ち会いがあったかどうかを報じていない。
これは、双方とも米朝実務者協議の妨げにならないようにという配慮をして、問題をヒートアップさせないようにする意図があると思われる。しかし、国連事務総長、EU、日本などは、国連決議違反だとして厳しく批判している。
アメリカのCNNは、今回のミサイルははしけ状の実験用海中発射台から打ち上げられたもので、潜水艦からの発射ではないと報じているが、もし実際に潜水艦からSLBMを発射することが北朝鮮に可能になれば、軍事的に大きな意味を持つ。
戦略核のトライアド(triad、三本柱)とは、①ICBM(大陸間弾道ミサイル)、②SLBM、③戦略爆撃機の3つである。要するに、これらは、核兵器の運搬手段である。海外基地のない北朝鮮にとっては、爆撃機を対米攻撃に使うことはないが、ICBMの実験には既に成功しており、今回SLBMも成功したとなれば、アメリカにとっては大きな脅威となる。