韓国にはこれまで、「日本が韓国を植民地支配してきたから、日本は反省し、韓国の立場を尊重すべき」という暗黙の思いがあった。それを打ち破ったのが金大中大統領である。「日本は戦後、血と汗を流し、多大な努力を重ね、民主主義国になった」と認めたことで過去とは決別したのである。しかし、後を継いだ盧武鉉大統領は再び日本の軍国主義を持ち出した。文在寅大統領は日本が「歴史問題について謙虚になれ」と言い続けている。「日本がこれに応じなければ、韓国はこれを正すためあらゆることをする」という論理になるのである。

 今後韓国と日本の関係が健全なものとなるためには、日本が民主主義国となったという現実を客観的に受け止めてもらうことが肝要である。

韓国は民主主義国家で法治国家なのか

 こうした韓国の状況を見ていると、こんな疑問が浮かんでくる。果たして韓国は「民主主義国家」なのか、そして「法治国家」なのか、という疑問だ。

 文在寅政権になり、民主主義と相反するような行動として、以下のようなものがあった。

・文政権は曺国氏任命をはじめ国会の同意を得ない任命を既に17件行っている。

・徴用工問題では日韓請求権協定の合意を無視した。さらに、2015年の慰安婦に関する合意も反故にした。そのいずれも発端は最高裁判決、憲法裁判決である。司法を隠れ蓑に条約、国際約束を平気で破る国といかに付き合っていくか。しかも、拙稿で何度か述べたので詳細は繰り返さないが、この判決には文在寅大統領の意向が大きく反映されている。

・文大統領の内政上の最大の課題が「積弊の清算」である。そもそも、積弊の清算は大統領の就任演説にはなく、演説では大統領選挙で自分を選ばなかった人も含めすべての国民の大統領になるといっている。しかし、就任後最初に手を付けたのは、保守政権の業績否定という「積弊清算」であった。戦後の韓国経済の最大の成功例「漢江の奇跡」について、李承晩政権から朴正熙政権という保守政権時代の業績であるということから、その事実を教科書から削除してしまったのだ。それほどまでに保守政権を嫌悪し、歴史に異常なまでの拘りを見せる文氏は、自ら率先して歴史の「改ざん」をしているのである。

 積弊の清算は、「親日」の清算も伴う。戦前日本に協力した人を親日としているが、こうした人々は漢江の奇跡の立役者でもある。

 このように国の分断を図る大統領が、民主主義を信奉する国の大統領とはとても思えないのである。