文政権は今後革新政権を20年続けることを目標としている。そのために行っているのが、韓国政治の改編、国民の思想の変革である。

 現在韓国の行政府と政府関係機関の幹部は革新系の政治活動家が占めており、文政権への忠誠を誓っている。加えて、国家の権力機構である、国家情報院、検察・警察、国防部などの改革を通じ革新政権の基盤を固めようとしている。言論機関も息のかかった者を幹部に入れ、労働組合の圧力とともに、政権への批判を封じ込めようとしている。残るは検察であり、これを改革すれば、文大統領に楯突くものはいなくなるという状況である。

 現在、世論調査でも明らかなとおり、文政権を支持するのは30代から50代前半にかけて、革新政権下で教育を受けた人々である。したがって、文政権で若者の教育を牛耳ることで長期革新政権に基礎がつくれると言うわけである。国防白書から、北朝鮮が敵国だという記述を取り除いたことが典型であるし、漢江の奇跡を教科書から削除したのもこの流れである。

 このまま革新政権が長く続けば、日本としても韓国との関係は考え直さざるを得ないであろう。

なぜ大統領は退任後不幸な境遇になるのか

 文大統領が検察改革を急ぐ理由の一つが、盧武鉉大統領が自殺に追い込まれたように、大統領が退任後不幸な境遇に陥るのを防ぐためと見られている。しかし、大統領の退任後の境遇が検察権力の政治化だけのせいであるとは思えない。

 そもそもこれまで述べてきたように、大統領には絶大な権力がある。その権力へのつながりを求めて、多くの人が寄ってくる。これまでの大統領の中にもこれを反省してクリーンでいようと努力した大統領もあったが、大統領がダメなら、その息子に近づいて来る。韓国では「ウリとナム」という言葉がある。これは身内と他人ということであり、家族は大統領と一帯と見られている。大統領に権力がある間、大統領周辺の不正は暴かれることがない。

 しかし、大統領がレームダックになる、さらに退任して権力が弱くなると一斉にこれまで従ってきた人が反発してくる。特にそれまで甘い汁の圏外にいた人が攻撃してくる。このため、前政権が叩かれるのである。その時、検察も新政権に寄り添った取り締まりをしてきたという面はあるであろう。しかし、原因を作っているのは「強すぎる大統領」と言うことが出来るだろう。

 韓国の大統領にはチェックアンドバランスが有効に働かない。国会で答弁に立つことはない。行政、司法を抑えている。言論機関も、大統領の言うことを聞かざるを得ない。経済界も反発できない。韓国が本当の意味での民主主義国家になるためには国政のチェックアンドバランスが有効に働く仕組みを作る必要があるのであろう。