「そして、実は今も、世界中に“日本と言えばものづくり”のイメージがあるんです。例えば日本人が何らかのウェブサービスのアイデアを持って海外に行っても、なかなか相手にしてもらえません。一方、ものづくりに関するアイデアなら、拙い英語であっても“もの”を通じてコミュニケーションを取ることができます」

「高級感があり、長く使えるスマートウォッチってないよね」という発想を元に生まれたスマートウォッチ「VELDT」の製造も支援。開発・販売はヴェルト(東京都渋谷区)

 だから、牧野は自身が「世界のアイデア」を「日本の技術力」で活かす企業を立ち上げるだけでなく、今後は日本の様々な企業がものづくりのノウハウを活かして世界と戦うべき、と提言するのだ。考えてみれば自らの長所を活かして戦うこと、自分のブランドを利用することは当然の戦略だ。牧野が話す。

「実は前職の時、様々なものづくりの企業をシリコンバレーに連れて行ったことがあります。そこである企業が、学校の音楽室をつくる時に使う防音設備をほかの用途で使おうと提案したら非常に興味を持たれたんです。実は、日本国内ではあまり注目されない技術の中に、世界に通用し、様々なニーズを満たす技術があるんです。日本企業が持つポテンシャルは、今後、もっと海外で活きると思っています」

◎取材/石田紗英子(IZUMO)、文/夏目幸明(IZUMO)

【夏目の視点】

 ある米国人研究者が「日本人は決められたことを細かくやるから、正確なものづくりをする。一方、米国人は「こうすればいいのに」という批判精神があるから、作業は適当だけどアイデアも出す」と言った。民族には、それぞれ得意分野があるのだな、と実感。この「海外のアイデア」をとりにいき、活かす企業が今後は生き残るはず、と見ました。