事前に市場の未来を読んで先回りする、問題が起きる前に対応する――新市場を開拓する経営者は、間違いなくそんな「タイムマシン」を持っている。本シリーズでは、ベンチャー起業家たちに、彼らがいかに数年後の社会を読んだのか、今後はどこにビジネスチャンスがあるかを語ってもらう。今回は25歳の時、史上最年少で上場を果たした経営者・リブセンスの村上太一社長に話を聞いた。(企業取材集団IZUMO)
バイト募集の紙に見た“時代の歪み”
「新たな事業を興す人物には、きっと“時代の歪みを正す感覚が必要”なんです」
人材紹介サイトを運営するリブセンスを起業し、史上最年少で東証一部上場へと導いた村上太一は、自らが考える起業家の条件をこう語る。
彼自身がまさにそうだった。高校生の時から「将来は起業を」と考えていた村上は、繁華街で電柱に貼ってあった “バイト募集”の紙を見て「既存の求人媒体は掲載料金が高いのかな」と感じた。
「将来、やりたいことが明確だったから、何気ない求人広告の貼紙が、僕にとって特別な意味を持ったんだと思います」
村上は早稲田大学進学後、これをヒントにビジネスプランコンテストで優勝を果たした。当時は媒体に「バイト募集」の告知を出すことだけで料金を請求されたが、彼はアルバイトの応募があった時に初めて広告料金が発生する成功報酬型のビジネスモデルを考案したのだ。それが後に、リブセンスの主力事業『ジョブセンス(現マッハバイト)』となる。
「当時はインターネットが浸透したばかりでした。そんななか、私は“情報を掲載するコストが紙媒体の時代より安くなっている”と気づいたんです。例えばツイッターを利用してもFacebookを利用しても、請求書は一枚も来ませんよね(笑)。しかし求人の業界には、紙媒体への情報の掲載によってお金をもらう印刷原価、流通コストの高いモデルしかなかったんです」