科学技術政策担当大臣賞を受賞したミツバチプロダクツが提案する事業は、固形チョコレートを瞬時にドリンクに変えるマシン「インフィニミックス」を軸に、新しい食文化と健康の増進を発信するものだ。注目されたのは、大企業で「お蔵入り」している技術を外部に切り出して事業化できる可能性を開いた点だ。この新しい事業モデルが、自由な発想とチャレンジする人材が輝く新しい道を開いた。
“飲むチョコレート”の普及で新しい食文化と健康を
ユーザーは調理容器に水と固形チョコレートを入れるだけ。ミツバチプロダクツが開発した「インフィニミックス」は、蒸気を用いる独自のスチームブレンダー機能により、約30秒という画期的なスピードで、チョコレートドリンクに仕上げてくれる。2019年春に飲食店に向けたBtoBtoC事業として提供を開始し、まずはチョコレートを飲む文化を浸透させることを目指している。
「世界中のチョコレートを楽しめる環境が広がっている日本ですが、その消費量はヨーロッパの5分の1程度。おいしさだけでなく、カカオがもたらす美と健康の効果も含めて普及させ、新しい文化を提供していきたいです」
ミツバチプロダクツ代表取締役/CEOの浦はつみ氏はそう語る。独自開発マシンの販売に加え、オリジナルレシピや材料(チョコレート)を定期的に提供していくサブスクリプション型ビジネスモデルの展開も準備中だ。同事業は注目に値する魅力を十分に備えているが、この事業をめぐっては、業種の枠を超えた支援体制が働いている点に関心が寄せられている。
社内不採用プランを社外で支援 パナソニックの独自戦略
浦氏は長年パナソニックに勤務し、近年は調理家電の営業職でリーダーを担ってきた。スチームブレンダー機能に着目し、チョコレートドリンク作成機のアイデアを発案したのも、こうした背景があったからだ。実はこのアイデアは、パナソニック社内で注目を浴びたが最終的には不採用となり、「お蔵入り」となっていた。
「製品を一定の水準で大量生産し、その販売実績によって収益を得ていくという、パナソニックのコア事業の流れには乗せにくいモデルでしたから、事業化は難しいという判断になったのです」。大企業ゆえの論理から、こうして日の目を見ない技術やアイデアは相当数存在する。特許を取得していれば、他社が同様のアイデアに取り組むこともできない。