領域を超えて人・技術・頭脳を「集積」せよ

平井内閣府特命担当大臣が語る日本のデジタルの未来

松ヶ枝優佳/2019.7.11

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平井卓也 内閣府特命担当大臣(クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策)

 2018年10月の就任以来、精力的に国内外の研究機関やイノベーション拠点などを訪問し、日本のデジタル化推進や、イノベーション創出に向けた取り組みの陣頭指揮を執る平井卓也内閣府特命担当大臣。イノベーションを興すには、デジタルな関わりだけではなく、まずは「現場」の人々が直接つながって生の情報を見聞きし、共有し合うことが重要だと説く。日本のイノベーション戦略が向かうべき方向性を伺った。

大臣が自らハブになる
HIRAI Pitchに込めた思い

 デジタル化やグローバル化が加速する中で、イノベーションを興すにはどうすればよいか。平井大臣は、過去や現在の延長線上「present push」ではなく、願うべき未来像からバックキャストして新しいモノやコトを考える「future pull」の必要がある、と強調する。この姿勢は、平井大臣が2018年10月の就任以来、定期的に開催してきた「Pitch to the Minister 懇談会 “HIRAI Pitch”(以下、HIRAI Pitch)」にも色濃く反映されている。

  HIRAI Pitchは、情報通信技術(IT)や宇宙開発など、注目分野の有識者を大臣室へ招き、平井大臣と産学官関係者の間でセクションを超えた情報交換の場を設ける取り組みだ。2018年10月24日の第1回を皮切りに、すでに46回も開催されており、さらに平井大臣が直接現場に赴く「地方版」も、福岡、渋谷、麻布、日本橋、つくば、大阪、名古屋、沖縄の8カ所で開催されている*1

「HIRAI Pitchの大きな目的は二つです。一つは“現場の話を聞く”。今後、次の時代を迎えるに当たり、ポテンシャルを解放していかなくてはいけない分野の皆さんから、直接話を聞くこと。もう一つは“現場の情報をよーい、ドンで共有する”。各部局や若手の官僚の皆さんにも参加してもらい、発言や質問も自由というフラットな状況で、私(大臣)と共に現場の話を聞いて同時に情報を共有し、一緒に政策を考えていくことです」

 つまり、現場を強く後押しできる政策を立案するために、官僚同士の「横のつながり」を強化する意図もある。

 AIやIoT、バイオ、量子、宇宙といったさまざまな分野のキーパーソンによるピッチを間近で見てきたことで、「どの分野においても、若い人たちが果敢に挑戦をしている」という印象を深めている一方、全国を回って100名を超える有識者からヒアリングを行う中で、「国内全体のマインドセットが良い方向へ変化している」ことを実感しているという。

スタートアップ戦略の課題は
企業や組織の「つながり」の形成

 イノベーションを創出しようという機運は全国規模で高まっているものの、HIRAI Pitchなどのアクションによって、かえって浮き彫りになってきた課題もある。

「最初のステップを踏み出すのが非常に難しいということです。アシストする人はいますが、まだボリュームが足りない印象があります。スタートアップには、アクセラレータなど、段階を追ってさまざまなサポートが欠かせません。メンタリングのような気付きや助言を与える存在も必要ですし、実際に事業を動かすには資金調達の課題もクリアしなくてはなりません。また、アシストを受ける前提として、社会的な信用の構築も必要でしょう」

 他にも、人材の流動化や「つながり」の形成、政府・自治体の協力を促す必要性なども感じていると話す平井大臣は、こうした課題を踏まえたスタートアップ戦略を、「Beyond Limits. Unlock Our Potential. ~世界に伍するスタートアップ・エコシステムの拠点形成戦略~(中間取りまとめ)」として発表している。そこでは、地方のスタートアップが手掛ける優れた製品やサービスを地方自治体が試験的に購入し、普及を支援する「トライアル発注」制度の活性化など、具体的で踏み込んだ施策が目を引く。

 また、企業や組織の「つながり」の形成については、HIRAI Pitchで地方へ出向いた際にも改善の余地を感じたと話す。

「確かにイノベーションに熱心なエリアはあります。ただ、エリア内やエリアを超えた情報共有が進んでいるかというと、そうとはいえません。各地を回って分かったのは、彼らのポテンシャルを解放するために、企業や組織、エリア間における横の連携や情報共有を助力する必要があるということです。そこで実際に、その場で必要な人材や技術を持っている民間企業、お金を出してくれる人たちにつなぐこともあります」

*1  2019年5月27日現在