インターネットを通じてソフトウェアの機能をサービスとして提供する「SaaS(Software as a Service)」事業者はもちろん、メーカーなども導入を始めているサブスクリプション型のビジネスモデル。
消費者の関心が「モノ消費」から「コト消費」へと移り変わる様を象徴するようなこの動きは、今後も様々な領域へと広がっていくことが予想される。サブスクリプションモデルのメリットや、課題はどこにあるのだろうか。
Netflixに見る、サブスクリプションの可能性
マクロミルが2018年7月24日に発表した「サブスクリプション(定額)型サービス」の利用実態や意識に関する調査結果を見ると、調査対象である首都圏在住の20~69歳男女1000名のうち、選択肢として用意された18種類のサービス(動画配信や音楽配信等)が定額で使い放題になることを「いずれも知らない」と答えたのは32.2%。残りの67.8%は何らかのサブスクリプション型サービスを認知していることになる。
また、最も認知率の高いサブスクリプション型サービスは動画配信サービス(57.9%)。利用経験率の高いサービスとしても24%で首位となっている。
このように、今や日本の消費者の間でも認知が広がり始めているサブスクリプションモデルだが、仕組み自体は斬新な物ではなく、古くは雑誌や新聞等の定期購読で用いられていた方式だ。それが近年、デジタルエコノミーと結び付いたことによって、業界問わず多くの企業に導入されるようになってきている。変化の理由について、10年以上にわたりサブスクリプションモデルの管理プラットフォームを手掛けるZuoraの創業者兼CEO、ティエン・ツォ氏は著作『サブスクリプション』(ダイヤモンド社、2018年10月)において、テクノロジーの進化によって「サブスクリプションが人々に届けられる方法が変わったから」だとしている。
サブスクリプションモデルの導入によって成功した企業として、最も分かりやすいのは動画配信サービスを展開するNetflixの事例だろう。
同社はまず、郵送を用いた定額制のDVDレンタルサービスを展開することで、競合の実店舗型レンタルチェーン最大手であるブロックバスターをじわじわと追い詰めていった。月額料金の他は、DVDの郵送にかかる送料等を別途徴収しないことはもちろん、延滞料金といった概念をも取り払うことで、「期限までに返却しなければならない」というレンタル市場の常識を覆したのだ。
そして2007年には、コアビジネスをオンデマンドのストリーミング配信サービスに切り替え、米国のレンタルビデオ市場を完全に破壊した。これは、デジタルテクノロジーによって既存の産業に創造的な破壊をもたらす「デジタル・ディスラプション」の代表例としても知られている。
また、サブスクリプションモデルは売り切り型のビジネスモデルと違い、解約されないよう顧客との関係を構築し続けていく必要がある。その点、Netflixは日々蓄積されていく会員の視聴行動データを収集・分析。これを使い会員が興味を持ちそうなコンテンツを提案するレコメンデーション機能の精度を高めているほか、同社のオリジナル作品の制作にも活用している。どちらも同社の成長を支えてきた重要な要素だ。
こちらの記事でも触れたが、サブスクリプションモデルの肝は契約してもらうことではなく、Netflixのように契約後もユーザーを見つめ続け、ユーザーにとってより質の高い体験を提供し続けることでサービスや製品を使い続けてもらうことだ。
消費者にとっての価値が「所有」から「利用」へ移行しつつある今、プロダクトを売り切るだけのビジネスモデルはこの先通用しなくなってしまう恐れがある。そのような中で、モノではなく顧客が求める「体験」という価値を与え続けることで、安定した収益を確保できるサブスクリプションモデルが広がってきたのは必然ともいえる。