SaaS×サブスク時代を生き抜くための新たな顧客志向とは

 元来、「CS」といえば「カスタマーサポート(Customer Support)」を指す言葉だったが、最近では「カスタマーサクセス(Customer Success)」の意味で使われる機会も増えてきた。

 文字通り「カスタマー(顧客)」を「サクセス(成功)」させることを意味し、数年前から米国やスタートアップ、IT業界を中心に注目されている概念だ。顧客ニーズが所有から利用へと移り変わる現代において、ますます存在感を増すこのキーワードについて見ていこう。

SaaSサービス、サブスクリプションの隆盛

 そもそも、カスタマーサポートとカスタマーサクセスとの違いは何だろうか。どちらも一見似てはいるが、以下の大きな違いがある。

●カスタマーサポート
顧客から寄せられた「既に発生してしまった問題や課題」を解決することで顧客満足度の向上を図る「待ち」の姿勢

●カスタマーサクセス
顧客の「成功」とは何かを把握し、その達成のためにサービスをブラッシュアップしていく「攻め」の姿勢

 カスタマーサクセスとは、そもそも問題を発生させない仕組みであり、そのサービスを選んだ顧客が期待する「目的」に応える、つまり「成功」体験を提供しようとする概念なのだ。

 この概念が注目されるようになった背景に、「SaaS(Software as a Service)」サービスと「サブスクリプション」モデルの台頭がある。「Dropbox」のようなオンラインストレージサービスや、「G Suite」のようなグループウェアツールに代表されるような、インターネット経由でアプリケーションの機能を提供するサービスや仕組みを指すSaaSと、サービスの利用期間に対して金銭が発生するサブスクリプションモデルは非常に相性が良く、併用されることが多い。

 富士キメラ総研が2018年7月30日に発表した市場調査レポート、「ソフトウェアビジネス新市場 2018年版」によれば、SaaSはシステムを短期間・低初期コストで導入できることや、他システムとの連携が容易であることなどから導入数が増加しており、ソフトウェア市場を牽引している。2017年のSaaSの国内市場規模はソフトウェア市場1兆2891億円のうち、3871億円(残りはパッケージの9019億円)。2022年度は、2017年度比65.6%増の6412億円への拡大が予測されている。

 サブスクリプションにしても、数々のメーカーやサービスによって導入されており、最近では2018年12月12日にパナソニックが家電の定額利用サービスを開始することが報じられ、話題を呼んだ。

 SaaSやサブスクリプションの仕組みを利用したビジネスモデルと従来の「売り切り」型モデルとの違いは、利用料という形で継続的に収益を得られる点にある。売り切り型に比べると一度に得られる額は少ないかもしれないが、企業側は毎月安定した収益を得られるため、事業計画が立てやすいというメリットがある。利用者側からすると、利用したい機能や期間を自由に選んで利用できることや、利用期間中もサービスが進化し続けていくこと、つまり常に最新の状態にアップデートされたサービスを利用できる点がメリットに挙げられるだろう。

 こうしたビジネスモデルを採用するサービスや企業は、当然とるべき戦略や顧客との関係性も「買い切り」型ビジネスのそれとは異なってくる。そこで持ち上がるのが「カスタマーサクセス」の考え方だ。