マーケティングの基本といわれる「4P」や「4C」とは何なのか。基本的な考え方を押さえておこう
多くの企業にとって事業を成功させるために不可欠な要素の一つ、マーケティング戦略。特に、市場での地盤が固まっていないスタートアップにとっては、企業の生存をかけた重要なテーマとなることも多いだろう。
マーケティングの手法や考え方は多岐にわたるが、今回は戦略の立案や実行に使える代表的なフレームワーク、「4P/4C理論」について解説する。真に顧客から求められる製品やサービスを生み、売れ続ける仕組みを作るにはどうしたら良いのか、考えていこう。
スタートアップにこそ必要なマーケティング戦略
4Pや4Cは、マーケティング戦略を実行に移す際に具体的な施策を考えるために使われる「マーケティングミックス」という考え方の代表例。マーケティングミックスでは様々な手段を適切に組み合わせることによって、目標として設定された売上や市場占有率などの達成を目指す。その代表的な要素が「4P」、そして「4C」と呼ばれるものなのだ。それぞれの構成要素を見ていこう。
ジェローム・マッカーシーが提唱した4Pは、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」の4つの「P」から成る、“企業”視点に立った考え方を指す。お互い密接に関係し合う4要素が効果的に組み合わさっているかどうかを考え、相乗効果を狙うというものだ。
一方、4Cは「Customer value(顧客にとっての価値)」「Customer cost(顧客の負担)」「Convenience(顧客にとっての入手容易性)」、「Communication(顧客とのコミュニケーション)」の4つの「C」で構成される。以下のように4Pを“顧客”の視点に置き換えたのがこの4Cの考え方で、ロバート・ラウターボーンによって提唱された概念である。
・Product(製品)→Customer value(顧客にとっての価値)
「Product」は製品自体の魅力であり、顧客視点に立てば「Customer value」として自身にとってどのような価値を持つものなのか、という観点である。
・Price(価格)→Customer cost(顧客の負担)
「Price」は製品の値付けであり、顧客視点に立てば「Customer cost」、すなわちどの程度の負担を要するものなのか、という観点である。負担に見合うだけの価値があるかどうかを問われることから、往々にして「Product」(Customer value)との組み合わせで考えられるのは想像しやすいだろう。
・Place(流通)→Convenience(顧客にとっての入手容易性)
「Place」は製品の流通をどうするかということであり、顧客視点に立てば「Convenience」、つまりどれくらい手に入れやすいかという観点になる。入手のしやすさを追究する場合もあれば、戦略的に入手経路を限定して製品の価値向上につなげる場合もある。後者の場合は「Promotion/Communication」との組み合わせで考える必要があるだろう。
・Promotion(販売促進)→Communication(顧客とのコミュニケーション)
「Promotion」は商品をいかにして認知・販売促進を進めるかということ。顧客視点に立てば「Communication」ということで、企業と顧客の接点をどのように持ち、どのようなコミュニケーションを図っていくか、という観点になるだろう。
このように4Pも4Cも注目している4要素は本質的に同じといえるが、効果的なマーケティングを行うには双方の観点から考えることが重要だ。特に「顧客中心時代」と呼ばれる今、新たに起業しようと思うなら顧客視点である4Cの概念は押さえておきたい。

事例で学ぶ4P/4C理論
次に、具体的な成功事例から4P/4C分析の考え方を学んでいこう。
●ユニクロ
「UNIQLO(ユニクロ)」のブランド名で国内外に知られるファストファッションの最大手。各観点から、同社のブランド戦略は以下のように分析できる。
・Product(製品)/Customer value(顧客にとっての価値)
高品質で着心地が良く、シンプルながらファッション性が高い「究極の普段着」。「ヒートテック」のような機能性に優れた製品も開発。
・Price(価格)/Customer cost(顧客の負担)
低価格。製品の企画から素材調達、生産や販売を自社で請け負い、同時並行で進めていくことで流通コスト等を削減している。
・Place(流通)/Convenience(顧客にとっての入手容易性)
2018年8月期時点で、国内店舗数は827店、海外店舗数は1,241店。店舗とECサイトの連携も強めており、店舗で採寸してEC用の倉庫から商品をピックアップするセミオーダー商品を展開。多様な店舗形態によって様々な顧客層を獲得。
・Promotion(販売促進)/Communication(顧客とのコミュニケーション)
シーズン毎に核となる商品を絞り込み、その製品に特化した広告戦略を行う。メディアも複数使い、プロモーションによる効果を最大化させる狙い。
●ヘルシア緑茶(花王)
現在、清涼飲料水売り場で「特定保健用食品」(いわゆる“トクホ”)表示を見かけることも多くなってきたが、2003年に発売された同製品はその先駆けといえる存在。健康意識の高まりに着目し、もともと健康に良いとされるお茶に付加価値を付けることで大ヒットした製品だ。この製品のマーケティングミックス分析は下記のようになるだろう。
・Product(製品)/Customer value(顧客にとっての価値)
元々健康に良いとされるお茶だが、さらに飲むだけで、体脂肪を減らしやすくなるという付加機能を持たせることにより、健康に意識が向いている層に対して訴求できる差別化を図った。
・Price(価格)/Customer cost(顧客の負担)
通常のお茶よりも割高。だが付加価値があるという製品の特性上、むしろ顧客の期待値向上につながった。
・Place(流通)/Convenience(顧客にとっての入手容易性)
今では全国のスーパーやホームセンター、ドラッグストアでも購入できるが、発売当初は関東・甲信越地区のコンビニエンスストアでの限定販売だった。このことは、値崩れ防止に一役買ったと考えられる。
・Promotion(販売促進)/Communication(顧客とのコミュニケーション)
発売当初のコンビニエンスストア限定販売という希少性および大々的な店頭陳列により認知拡大に。そして人気タレント等を起用した積極的なTVCM放送などによって、馴染み深い製品へと成長した。

このように、成功する製品や企業のブランド構築においては4P/4Cそれぞれの構成要素とその関連性が考えられていることが分かる。例えばユニクロの場合、もしはじめから百貨店への出店に絞っていたとしたら、Product/Customer valueである「普段着」、Price/Customer costである「低価格帯」といった他構成要素との矛盾が起きてしまう。項目の一つひとつを埋めていくのではなく、4要素の「組み合わせ」としてバランスや相乗効果を検討していくのが、4P/4Cの考え方だ。
成功するための活用法
先述した通り、4Pは企業(売り手)視点、4Cは顧客(消費者)視点の考え方だ。4Pのみを重視していては企業側の利益のみを追求することになってしまうし、4Cに偏っては実行不可能な戦略を描くことになってしまうかもしれない。また顧客主義時代とはいえ、あくまでも4Cの基になったのは4Pであることも忘れないようにしたい。必ず、双方の視点から検討・分析する必要がある。
4P/4C、双方を行き来してマーケティング戦略を練り上げる手法は、新たなサービスや製品を世に出そうとするスタートアップにとっても役に立つだろう。自分たちが提供したい製品が顧客にもたらす価値は何か。販売経路は適切か。価格設定は他の3要素や事業目標と矛盾しないのか。
こうしたことを明示できれば、投資家からの支援も得やすくなるだろう。起業の基本となる「誰に、何を、どう売るか」にも通ずる4Pと、それを顧客側から捉え直した4C理論。マーケティングに関する施策・分析を行う際は、これらを用いた総合的な観点から検討してみてはいかがだろうか。





