事例で学ぶ4P/4C理論

 次に、具体的な成功事例から4P/4C分析の考え方を学んでいこう。

●ユニクロ

「UNIQLO(ユニクロ)」のブランド名で国内外に知られるファストファッションの最大手。各観点から、同社のブランド戦略は以下のように分析できる。

・Product(製品)/Customer value(顧客にとっての価値)
高品質で着心地が良く、シンプルながらファッション性が高い「究極の普段着」。「ヒートテック」のような機能性に優れた製品も開発。

・Price(価格)/Customer cost(顧客の負担)
低価格。製品の企画から素材調達、生産や販売を自社で請け負い、同時並行で進めていくことで流通コスト等を削減している。

・Place(流通)/Convenience(顧客にとっての入手容易性)
2018年8月期時点で、国内店舗数は827店、海外店舗数は1,241店。店舗とECサイトの連携も強めており、店舗で採寸してEC用の倉庫から商品をピックアップするセミオーダー商品を展開。多様な店舗形態によって様々な顧客層を獲得。

・Promotion(販売促進)/Communication(顧客とのコミュニケーション)
シーズン毎に核となる商品を絞り込み、その製品に特化した広告戦略を行う。メディアも複数使い、プロモーションによる効果を最大化させる狙い。

●ヘルシア緑茶(花王)

 現在、清涼飲料水売り場で「特定保健用食品」(いわゆる“トクホ”)表示を見かけることも多くなってきたが、2003年に発売された同製品はその先駆けといえる存在。健康意識の高まりに着目し、もともと健康に良いとされるお茶に付加価値を付けることで大ヒットした製品だ。この製品のマーケティングミックス分析は下記のようになるだろう。

・Product(製品)/Customer value(顧客にとっての価値)
元々健康に良いとされるお茶だが、さらに飲むだけで、体脂肪を減らしやすくなるという付加機能を持たせることにより、健康に意識が向いている層に対して訴求できる差別化を図った。

・Price(価格)/Customer cost(顧客の負担)
通常のお茶よりも割高。だが付加価値があるという製品の特性上、むしろ顧客の期待値向上につながった。

・Place(流通)/Convenience(顧客にとっての入手容易性)
今では全国のスーパーやホームセンター、ドラッグストアでも購入できるが、発売当初は関東・甲信越地区のコンビニエンスストアでの限定販売だった。このことは、値崩れ防止に一役買ったと考えられる。

・Promotion(販売促進)/Communication(顧客とのコミュニケーション)
発売当初のコンビニエンスストア限定販売という希少性および大々的な店頭陳列により認知拡大に。そして人気タレント等を起用した積極的なTVCM放送などによって、馴染み深い製品へと成長した。

 このように、成功する製品や企業のブランド構築においては4P/4Cそれぞれの構成要素とその関連性が考えられていることが分かる。例えばユニクロの場合、もしはじめから百貨店への出店に絞っていたとしたら、Product/Customer valueである「普段着」、Price/Customer costである「低価格帯」といった他構成要素との矛盾が起きてしまう。項目の一つひとつを埋めていくのではなく、4要素の「組み合わせ」としてバランスや相乗効果を検討していくのが、4P/4Cの考え方だ。