「全国タクシー」をはじめとしたソフトウェア/ハードウェア開発で知られる「JapanTaxi」が「2018年上半期、最も資金を集めたスタートアップ企業」として話題になった。同社は今年2月にトヨタ自動車から75億円、同年同月にスタートアップ企業への投資を行う「未来創生ファンド」から10.5億円を調達し、合計85.5億円もの資金調達に成功したのだ。

 スタートアップにとって最優先課題ともいえる「資金調達」。最近はベンチャーキャピタルやクラウドファンディングなど、資金調達方法も多様化しているが、事業段階や目的によって最適な手法は異なる。

 今回は主にスタートアップが起業前の「シード」と呼ばれる段階と起業直後である「アーリー」段階で活用したい資金調達法について、メリットやデメリットと併せて紹介する。

株式発行による「エクイティ・ファイナンス」

 企業の資金調達方法は大きく「デット・ファイナンス」と「エクイティ・ファイナンス」の2種類に分けることができる。エクイティ・ファイナンスから順に見ていこう。

 エクイティ・ファイナンスは株式発行を伴う資金調達法の総称だ。昨今、スタートアップの資金調達として浸透してきた「ベンチャーキャピタルからの出資」もこちらにあたる。下記のような手法がエクイティ・ファイナンスに分類される。

・調達法①:ベンチャーキャピタル(VC)からの出資
・調達法②:コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からの出資
・調達法③:個人投資家、エンジェル投資家からの出資

 まとまった金額を調達したい場合はVCやCVCからの出資を得たいところだろう。エクイティ・ファイナンスは株主資本のため、原則として返済の必要が無い。他にも負債ではなく資本なので利息がかからない点や、自己資本比率が増える点がメリットに挙げられる。

 加えて、投資家が持つ人脈やコネクション、事業に対しての知見を利用させてもらえることも。こうした金銭面以外のメリットが大きいことからも、VCやCVC、エンジェル投資家からの資金調達は注目される傾向にある。またVCやエンジェル投資家からの出資を受けられるということは、投資家達から「将来性のある事業」だと評価されたことになるため、箔をつける意味でも注目度の高い手法だ。

 デメリットは株式を発行する以上、株主となる出資者が経営に口を出してくることは避けられないことだ。本来の事業計画に加えて株主への配当政策を考える必要があり、着実に結果を出すことが求められる。うかつに株式を発行して株主比率を大きくしてしまうと、経営のコントロール権を完全に失ってしまう危険性すらあるのだ。

 スタートアップの資金調達というとまずエクイティ・ファイナンスが思い浮かぶが、こうしたリスクを踏まえておきたい。創業後間もない不安定な段階で、リスクを抱え込んででも選択すべき手法なのかどうか、慎重に選択すべきだろう。

<エクイティ・ファイナンスのメリット>

・原則として返済の義務がない
・負債ではなく資本のため利息がかからない
・自己資本比率が増える
・投資家の人脈やコネクション、知見を利用しやすい
・将来性を投資家に認められたことになるため箔がつく

<エクイティ・ファイナンスのデメリット>

・株主による経営への口出しにより経営がコントロールしにくくなる
・本業以外に株主への配当政策を検討する必要がある

借入による「デット・ファイナンス」

 デット・ファイナンスは「借入」による資金調達法だ。下記のような手法がそれにあたる。

・調達法④:銀行からの融資
・調達法⑤:社債
・調達法⑥:公的機関からの融資
・調達法⑦:資本性ローン
・調達法⑧:親族や知人等、個人からの借入

 デット・ファイナンスのメリットは、前述のエクイティ・ファイナンスと違い金融機関等の“資金の出し手”が経営に口を出してくることがない点や、投資家たちの顔色を伺う必要がない点だろう。デメリットは期限までに利息込みで返済する義務が生じる点や、自己資本比率が下がる点が挙げられる。無理のない借入額や返済期間を設定したいところだ。

 せっかく起業するのだから自分の思うように経営していきたいと考え、デット・ファイナンスを選ぶ企業もあるだろう。しかし起業時や起業直後では、最も身近に思える「銀行からの融資」を受けるのは困難だろう。銀行の審査は非常に厳しく、最低でも起業から三期以上経っている企業でないと審査を通過できないとも言われているからだ。また、スタートアップの起業時には、そもそも「創業時から負債を抱えたくない」という思いから銀行などからの融資は敬遠しがちかもしれない。

 そこで、まずは以下の創業融資制度の活用(調達法⑥)を検討したい。

・日本政策金融公庫の「新創業融資制度」
・信用保証協会の「制度融資」

 特に、創業資金の調達先として第一の選択肢に挙げられるのが新創業融資制度。無担保・無保証人で利用できる上に、制度融資に比べて融資速度も速い。融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)だ。

 実績のない企業にとっては貴重な資金調達源である一方で、当然ではあるが審査は行われる。実現可能な事業計画を入念に練ってから審査に臨もう。

<デット・ファイナンスのメリット>

・出資者(金融機関)が経営に口出ししてこない
・株主への配当政策が不要なので本業に集中できる

<デット・ファイナンスのデメリット>

・利息込みの借入金を期限までに返済しなければならない
・自己資本比率が下がる

ファンマーケティングを兼ねた「クラウドファンディング」、頼りになる「補助金」

 最後に、エクイティにもデットにも含まれない手法にも触れておこう。

 まず、最近流行りのクラウドファンディング(調達法⑨)だ。ファンマーケティングなど広報的な効果を狙って用いられることも多いが、起業資金の調達手法としても活用されている。東京都はクラウドファンディング利用に伴う手数料の補助や事業計画作成の相談を受けつける等、日本政策金融公庫と連携して「クラウドファンディングを活用した資金調達支援」を行っており、注目度の高さが伺えるところだ。

 アイデアやサービス、ビジネスモデルをプロジェクトとして公開し、賛同者から資金を集めるクラウドファンディングの手法は、これまで取り上げてきた手法とは違った審査基準で出資可否の判断が成されることも多い。

 クラウドファンディングサイトを利用する一般ユーザーは、目の肥えた投資家達とは全く違った観点でプロジェクトの価値を判断することもある。他の手法では資金を集めづらかったプロジェクトでも、クラウドファンディングを利用すれば目標金額を調達できる可能性があるのだ。

 購入型や寄付型であれば出資者に金銭を返済する必要はないし、手数料以外に多額の自己資金を用意する必要もない。出資者の反応から市場のニーズを知ることができるし、期間内に目標金額を調達することができれば対外的に誇れる実績となる。

 一方で、クラウドファンディング自体は珍しい手法では無くなってきていることは覚えておきたい。日々多くのプロジェクトが立ち上がる中で、出資者に選ばれるためにはどういう見せ方をしたら良いのか、各クラウドファンディングサイトや事業の見せ方をよく研究する必要がある。また特性上、秘匿性の高い事業の資金調達には向かない。

<クラウドファンディングのメリット>

・投資家や金融機関とは異なった評価により出資を集められる可能性がある
・仕組みによっては金銭の返済義務がないこともある
・手数料以外の自己資金は不要
・テストマーケティング/ファンマーケティングの側面も持たせられる
・成立した場合、対外的に誇れる実績とできる


<クラウドファンディングのデメリット>

・プロジェクトが多数起案されてきており差別化に腐心する必要がある
・秘匿性の高い事業は実施しにくい

 最後に、国や自治体による補助金(調達法⑩)に触れておこう。代表的なものは下記の2つだ。

・創業支援事業者補助金
・地域創造的起業補助金

 公募によって選ばれた事業者に対し、国が経費等の補助を行う制度で、いずれも今年度(平成30年度)の公募は終了している。

 国や地方自治体による助成金や補助金は募集期間が短いことが多く、募集要項も異なるため、意識して情報取集していないと存在すら知らないままチャンスを失う可能性も高い。自治体が中小企業を応援する目的で行う施策を見逃さないために、創業時のみといわず起業後も定期的に各自治体のホームページや中小企業庁の「ミラサポ」などをチェックすることをお勧めしたい。

 申請書類の準備が煩雑、募集期間が短い等のデメリットもあるが、返済不要というメリットは大きい。公募形式ということで、競争相手の多さを思って尻込みしてしまうかもしれないが、平成30年度の創業支援事業者補助金の採択結果によれば、168件の応募のうち134件が採択されている。十分、チャレンジする価値があると思える数字ではないだろうか。

<補助金のメリット>

・返済義務がない
・採択率も決して低くはない

<補助金のデメリット>

・募集期間が短い
・情報に触れる機会が限られている
・申請書類の準備が煩雑
・公募のため競合と比較される

まとめ

 今回は起業時、起業直後の主な資金調達方法について紹介した。目標額の調達を最優先にしたいのか、今後の事業拡大も見据えたパイプ作りも視野に入れたいのか等、目的や事業の性質によって最適な方法は異なってくる。

 資金の調達方はスタートアップ自身が選択できるもの。話題になるからといって無計画に株式を発行したり、資金調達自体が目的になってしまったりといった事態は避けたいところだ。メリットやデメリットを加味した上で、目的に合った調達方法を選びたい。