(文:冬木 糸一)
無人兵器についての一般向けのノンフィクションはこれまでも出ていたが、ようやく最新の政治、技術を踏まえた上で自律型兵器を網羅的に語ってくれる本が現れた! これから紹介する、ポール・シャーレ『無人の兵団──AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』がまさにそれで、
「自律型兵器とはなんなのか、その定義」、「自律型兵器にどこまでの決定権をもたせるかについて、軍事的な意思決定権を持つ人間はどう考えているのか?」、「これまでの歴史の中で武器・兵器を使用禁止にした法律はどの程度の達成率で、成功要因はどこにあるのか?」
といった、自律型兵器の最新の技術・運用動向だけではなく、それがもたらす社会、歴史的観点から「倫理的、道徳的、国際法的な観点からどうあるべきなのか?」と問いかけていく、広範でありながらも各論の記述のしっかりした傑作である。著者はもともとイラクやアフガニスタンに出征していた米陸軍のレンジャー部隊員で、その後は米国防総省にて自律型兵器に関する法的・倫理的課題と政策の研究を行い、今は安全保障に関わっているというこの分野の専門家である。
いろいろな角度から驚き続けることができる
今、世界中の軍隊がロボットを戦争に配備し、90カ国以上が無人機に空を哨戒させている。30カ国以上は、交戦の速度が早すぎて人間では反応できない状況のために自律型防御兵器を有しているほか、イスラエルのハーピー無人機は、広い範囲を自動で索敵し、敵レーダーを発見した時は無許可で破壊する、攻撃の決断を下すところまで含めた高度な自律性を有している。これは中国が購入後リバースエンジニアリングして製造したほか、少数の国に売却されているという。
世界中で広まりつつある自律型兵器は、人間の生死を決定する力を持ちつつある。だが、それは議論もなしに決められていいものではない。兵器が誰を殺すかを判断し、それが仮に誤射だった場合、誰が責任を取るべきなのか、誰かが殺されることが兵器によって決定されるなんてありえない、とする否定的な考えがある一方で、兵器が高度な認識能力で人間をアシストすることで、民間人が死傷するのをこれまで以上に防ぐ、人道的なものになりえるという人もいる。確かに、ライフルを持った人間と熊手をもった人間を区別する時に、人間をしのぐ可能性はある。