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中央アフリカでロシア人記者3人が殺害された(2018年8月7日、写真:AP/アフロ)

(文:白戸圭一)

 アフリカにおける中国のプレゼンス拡大が日本で広く知られるようになったのは、おそらく過去10年ほどのことだろう。

 しかし、アフリカに深く関わっていた一部の日本人は、アフリカにおける中国のプレゼンス拡大を1990年代の終わりごろから少しずつ認識し始めていたと思う。当時、アフリカ各地で目にする機会の増えた中国人の姿や中華料理店は、今から思えばアフリカ開発の主役の座に中国が躍り出る時代の到来を告げていた。

 それからおよそ20年。アフリカで今、静かにプレゼンスを拡大させているのがロシアである。その動向が日本のメディアで伝えられる機会はほとんどないが、米国の軍や議会はアフリカにおけるロシアの動きに強い関心を示し、欧米では、この問題に関する質の高い報道が存在する。

 中国のアフリカ進出の中心が直接投資やインフラ建設に象徴される「経済」であるのに対し、現在のロシアのアフリカ進出の柱は「軍事」である。それも、ロシアの正規軍を前面に押し出すのではなく、「民間軍事会社」や「SNS」などを使った秘密工作によって、アフリカ諸国の政権中枢に食い込む手法が用いられている。以下、グローバルプレイヤーとしての復権を目指しているとみられるロシアの対アフリカ政策の一端を素描してみよう。

英紙が報じたロシア機密文書

 英国の高級紙『ガーディアン』は6月11~13日の電子版で、アフリカにおけるロシアのプレゼンス拡大についての特集記事を配信した。記事では、同紙が入手したとされるロシアの対アフリカ政策の詳細を記した機密文書の内容が暴露されている。文書の作成部署は不明だが、ウラジーミル・プーチン政権が少なくともアフリカの13カ国で積極的なプレゼンス拡大を図っている実態が詳報されている。(https://www.theguardian.com/world/series/russia-in-africa

 プーチン政権のアフリカ進出が本格化し始めたのは2016年ごろからだが、東西冷戦時代にまで遡れば、ソ連はアフリカの社会主義政権や植民地解放勢力との間で強固な政治的、経済的、軍事的な関係を構築していた。

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