サンフランシスコのプレシディオ将校クラブの一室で日米安全保障条約に署名する吉田茂総理(Wikipediaより)

 恐るべき勢いで軍事力を増大させている中国。対して日米安全保障条約頼みの日本は、決して脅威に真剣に向き合っているとは言えない。軍事社会学者の北村淳氏は、新著『シミュレーション日本降伏 中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』において、日中両国の軍事戦力差を冷静に比較分析している。前編では中国の地対艦ミサイルの性能について触れた。後編は日米安保条約の真実に迫る。(JBpress)

(※)本稿は『シミュレーション日本降伏 中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』(北村淳著、PHP新書)より一部抜粋・再編集したものです。

自立できない日本

(前編)中国製ミサイル、「見掛け倒し」の評価は本当か?
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57057

 自著『シミュレーション日本降伏』に示したように、海洋戦力では中国軍が自衛隊に対してかなり優勢であるという現実が存在しても「どうせ米軍が助けてくれるのだ」と考えているため、日本劣勢という事実に目を向けようとはしない。

 同様に、自衛隊の軍備状況は日本防衛にとって心配のない状態なのか? という声が上がっても、「米軍と共通の主要兵器を持っている自衛隊は十分強い」と思い込み、「どうせ米軍が助けてくれるのだ」と考えているため、自衛隊の抜本的組織改革や装備体系の見直しなどを本気で実施しようとはしない。

 日本政府・国防当局は「日米同盟にすがりつく」という国防戦略しか持たず、「日米同盟を強化する」という口先だけの国防政策しか実施できない、という国際的には恥辱的な状況に身を置いても、「どうせ米軍が助けてくれるのだ」と考えているため、国際軍事常識に照らして妥当なレベルの日本独自の国防戦略を策定せずとも、平然としていられるのだ。