写真左より、松尾佳亮氏、永淵恭子氏、松村大貴氏

 BtoBマーケティングの祭典「Bigbeat LIVE」(ビッグビート主催)が8月2日に東京ミッドタウン日比谷で開催される。3年目を迎えた今回も、時代に即した多様なセッションを用意し、それぞれのテーマにフィットする登壇者たちが意見交換を繰り広げるという。そこで、当日登壇予定の3人に、これからの時代に求められているマーケティングのあり方について、語り合ってもらった。

「満たされちゃった時代」のマーケティングで注目される「生身の出逢い」の価値

空 CEO 松村大貴氏
ヤフーでアドテク事業を担当し、マーケティングおよびブランディングの経験を積んだ後、2015年に空を起業。価格設定に最新テクノロジーを活用して企業経営を支援する、いわゆるプライステックによるサービスを展開。ホテル・旅館の料金設定支援ソリューション「MagicPrice」で急成長を果たしている。

松村大貴氏(以下、松村氏):言い古された表現ですけれど、20世紀はモノを大量に作って、それを大量に売る時代でしたよね。だからマーケティング領域でも、たくさんのモノを売り切るための技術やナレッジが形作られていった。とにかく売れるCMの作り方とか、売れるコピーライティングといったものを皆が夢中で追いかけていたと思うんですよ。

 ところが21世紀になって、とりあえず皆が物質的には満たされちゃった。「さて、じゃあそんな時代のマーケティングってどうなんだ?」という問いを僕らは突きつけられるようになりました。需要がひたすら右肩上がりでアップし続けている時代ならば、企業は増産をして供給を増やせば良かったし、マーケティングもそれに寄り添えば良かったけれども、今は需要が日々小刻みにアップダウンを繰り返している。経営者にしてみれば、工場を大きくしたり、人を増やすのではなく、今あるリソースをいかに無駄なく有効活用して収益化できるかどうかを問われています。

 私たち空がプライステックに着目をしたのも、こうした時代背景からでした。上下動を繰り返す需要に対しては柔軟な価格設定の変化で対応していくべき。そのためのテクノロジーで勝負をしようと思っているんです。

ABEJA マーケティング・コミュニケーション 永淵恭子氏
クラウドインテグレーター企業で実績を上げ、AWS関連コミュニティでも「ぎょり」の愛称でおなじみの人となった。その後、AIスタートアップのABEJAに入社。企業のAI実装を可能にするABEJA Platformのマーケティングを担うとともに、自社カンファレンスの開催の統括も担当。

永淵恭子氏(以下、永淵氏):私は今、ABEJA Platformという、企業のためのAI実装プラットフォームのマーケティングを担当しているんですが、実は松村さんと同じような発想を持っているんですよ。闇雲に「AIを導入したい」と言ってくださる企業が増えていくことよりも、その企業がそもそも「やりたいこと」を持っていて、それを実現するにはどうすれば良いんだろう、ということでABEJAに相談してくれるような流れが生まれていくべきだと思っているし、そのためのマーケティングを心がけているつもりです。

 AIは世間でいろいろ話題になっていますけれど、結局、使う側の「やりたいこと」を支援していく技術の1つに過ぎません。その代わり、松村さんがおっしゃっていたような「今あるリソースを効率的に活用する」という場面で、しっかり結果を出せる技術ではあるので、「やりたいことがあったらABEJAに相談してみよう」がまずあって、結果として「うまくいったね。後で気づいたけど、AIが機能していたんだね」となっていくような流れが理想的だな、と思います。