日本にBtoBマーケティング文化は根付いていないと言われているが・・・

 日本のBtoBにはマーケティングがないと言われる。事実、中小企業にはマーケティングという職種が存在していないし、大企業であっても営業部付きで販促を担うマーケターが数人いるのが関の山ではないだろうか。

 マーケティング文化が根付き、刻々と進化するテクノロジーを活用したデジタルマーケティングが進む米国に比べると、その差は歴然だ。

 マーケティングがないと、何が問題なのか。ビッグビート 代表取締役 濱口 豊氏とPDCAソーシャル代表のニール・シェーファー氏の対談をお届けする。

日本のBtoBにはマーケティングが必要だ

──日本のBtoBマーケティングの現状について、おふたりはどのようにご覧になっていますか?

ニール・シェーファー氏(以下、敬称略) 米国企業では世代交代があり、BtoBでも企業がどんどん若くなるので、彼らが使っているメディアに合わせてコミュニケーションのあり方を見直す必要があります。一方、今の日本のビジネスを牛耳っているのは、バブル世代。特にBtoBは保守的ですし、デジタルネイティブの感覚がわからないのだと思います。

濱口 豊氏(以下、敬称略) 歴史的に見ると、日本は作れば売れた“Japan as No.1”の時代を経験してしまったことが大きいでしょうね。バブルがはじけて、グローバルとデジタルの波によって20年前に構造が変わってしまっているにもかかわらず、いまだに対処しきれていない。マーケティングという概念に対する正しい理解がないまま、「マーケティング=宣伝・広告」と思い込んで敬遠されているのが現状ではないでしょうか。

ビッグビート 代表取締役 濱口 豊氏
広告業界で30年、一貫してBtoB畑を歩み、とりわけIT企業にはDOSの時代から長くかかわる。外資系クライアントとのお付き合いの中、マーケティングの強力なパワーを間近で感じ、日本企業がこの機能をうまく使いこなせば日本の将来に大きなインパクトを与えることができるはずだと考えるようになった。

ニール もうひとつ、米国が非常に進んでいる点として、豊富なビッグデータをマーケティングに取り入れている点が挙げられます。デジタルすら取り組んでいない日本のBtoB企業は、完全にチャンスを失っている。

 経営企画もExcel分析で終わっているし、十分な戦略が立てられていません。5年先、10年先を見据えて、企業をどう導いていくのか、具体的に答えられる経営者がどれほどいるでしょうか。日本の将来がどうなるのか、マーケティングがひとつの鍵を握っていると言えるでしょう。

濱口 経営者の意識から変えていく必要がありますね。昨今の米国のトレンドを教えていただけますか?

ニール 我々は“Sales and Marketing Alignment”と呼んでいますが、BtoBではマーケティングと営業の関係を見直して、もっと一緒に取り組んでいこうという動きになっています。BtoBの場合、お客様と直接関係を持っているのはマーケティングではなく営業なので、マーケティングだけでなく営業もデジタル化して、データをみんなで活用していこうということですね。

濱口 そんな米国とグローバルで戦うなんて、無謀ですよね。

ニール 僕は90年代に日本に住んでいたので、生産技術世界1位という輝かしい日本しか知らない。なぜ海外に負けるようになってしまったのか、不思議で仕方ないというのが本音です。