北朝鮮の代表的な料理、平壌冷麺(資料写真、出所:Wikipedia

 北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源とも言われるのが、国外に散らばる北朝鮮レストランだ。日系企業が集中する上海・虹橋開発区の後背地、古北新区の一角にも北朝鮮レストランがある。

 6月上旬の昼どき、筆者は北朝鮮レストラン「平壌高麗館」がある黄金城道を知人の中国人と歩いていた。すると、派手なピンクのチョゴリを着た美女2人が、チョゴリの裾をヒラヒラさせながらこっちに駆け寄ってきた。そして私たちの行く手を“とおせんぼ”しながら、中国語でこう話し始めた。

「ここにおいしいレストランがありますよ。ビビンバ35元(約560円)、とっても安いですよ。ランチはここで食べて行きませんか?」

 声をかけられたのは私たちだけではない。黄金城道にタクシーが停車すると彼女たちはすかさず駆け寄って、降車する客を取り囲む。“私の美しさで落とせない男はいない”とでも言わんばかりに、男性へのアタックは強気で、執拗だ。「ノー」と振り切るにはよほどの強い信念が必要だろう。

 同行の女性は「朝鮮料理?」と一瞬渋ったものの、「安いから行ってみよう」と言い出した。彼女たちの強引な客引きに半ば屈する形で、結局、北朝鮮レストランでランチをとることになってしまったのである。