戦闘方法も、強力な兵器で正面から戦うというよりも、今回のタンカー攻撃で使用された小型ボートのように、テロに近い不正規戦、非対称戦を得意とする組織です。

 正規軍と革命防衛隊の能力的な違いを見ても、今回タンカーを攻撃したのはどちらの可能性が高いかと言えば、当然、革命防衛隊が怪しい、となるでしょう。

 他方、「ジェイシ・アドリ」などの反政府軍事組織の可能性も、今に至っては低いと言えます。

 今回のタンカーへの攻撃自体は、反政府組織でも実施可能でしょう。小型ボートと高度な兵器とは言い難い吸着機雷、それに艦船の情報を手に入れるためのインターネット環境があれば実行可能です。しかし、攻撃後に行われた不発弾の回収は、こうした反政府組織では困難です。自衛隊でも、不発弾回収は高い能力を持った不発弾処理隊が行っていますし、何より、こうした武装組織程度では、タンカーの周囲に米軍艦艇などの脅威が存在しないことをレーダーなどで確認することができないためです。

 つまり、消去法的にイスラム革命防衛隊による攻撃だったと推定できるのです。

 ただし、革命防衛隊が組織的に行ったとは限りません。革命防衛隊は、ハメネイ師の強い指導下にありますが、そのハメネイ師が安倍首相と会っている最中に攻撃を行うことを革命防衛隊の司令官が命じるとは考え難いためです。

 ハメネイ師の指導下にあることから、革命防衛隊が実行したのではないと言う論者もいますが、総数12万人を越え、ハメネイ師などよりもさらに強硬な思想を持つ者も多い組織であるため、いわゆる跳ねっ返りが暴走する余地は十分にあります。

 かなり昔の話ですが、筆者はこの革命防衛隊の影響を強く受けるテロ組織、ヒズボラの兵士たちに会ったことがあります。筆者の印象としては、彼らは規律などの面で“軍隊”と呼ぶには疑問を持たざるを得ない兵士でした。

【4】動機は何か?

 革命防衛隊の一部が今回の攻撃を行ったと考える場合、彼らに十分な動機があるかどうかは考慮する必要があるでしょう。

 トランプ大統領は、イランへの批判を強め、今年(2019年)5月には、核合意から離脱し、イランに対する経済制裁の再開を宣言しています。これは合意の一方的な破棄と言えるため、イランの穏健派であるロウハニ大統領もトランプ大統領に強く反発しました。このアメリカの核合意離脱を発端として、アメリカ・イランの関係は急速に悪化し、現在ではアメリカによるイラン攻撃さえ噂される状況となっています。

 この状況にあって、安倍首相が双方の仲介に乗り出したところです。ハメネイ師がアメリカとの交渉を拒否したと報じられていますが、同時に核兵器を製造も保有も使用もしないと発言しており、イランとしては容易な妥協はできないものの、指導部が、これ以上のアメリカとの対立激化を望んでいないことは明らかです。