それでも、攻撃されたタンカーの写真を見ると、かなり大きな破口が生じていることが確認できますし、本来の攻撃態様である水中での爆破であれば、さらに大きな破口を生じさせることを考えれば、即席で製作されたものではなく、兵器としてしっかりと製造したものであろうと思われます。

 この吸着機雷の設置は、その後何者かが不発したものを除去した時と同様に小型船舶で接近し、並行して航行しながら、磁力で取り付けたのでしょう。

 ただし、ここで1つ疑問が生じます。2隻とも吸着機雷がかなり上の位置に取り付けられているということです。

 航行しているタンカーの喫水線下、つまり水中に仕掛けることはほぼ不可能ですが、水面近くに取り付けることはさほど難しくないはずです。破口が喫水線付近に生じれば、タンカーには浸水が発生し、より大きな被害をもたらした可能性もあります。大型タンカーのため、沈没にまで至った可能性は低いと思われますが、浸水が発生すれば、より大きな被害を与えることができたことは確実です。それを行わなかったということは、攻撃を行った者の目的がデモンストレーションだったのだと思われます。

【2】米軍は不発弾回収ボートをなぜ撮影できたのか?

 4発の吸着機雷の内、1発が不発となったことは、かなり早い時間帯で把握されたことでしょう。写真も残っています。

 上で指摘したとおり、この不発弾を回収すればかなりの情報が判明するはずですが、吸着機雷は、原理的には非常に簡単な兵器です。それなりの工業力があれば作ることはたやすいため、不発弾だけでは、攻撃者の特定には至らないかもしれません。

 それを踏まえ、今回、米軍は罠を張った可能性があります。付近に米軍艦艇を近づけないでおけば、攻撃者が、証拠を取られることを恐れて回収にくる可能性があると踏んだのでしょう。

 米軍は、夜間監視能力のある無人機を滞空させ、監視体制を取りました。結果的に、攻撃者はこの不発弾を小型ボートで回収に訪れ、それを米軍に撮影されました。

タンカー攻撃、「機雷除去するイラン軍」の映像 米が公開

オマーン湾で、日本企業が運航するタンカー「コクカ・カレイジャス」に接近し、不発機雷を撤去しているイランの巡視船を捉えたとされる映像の一部。米中央軍提供(2019年6月13日公開)。(c)US Central Command (CENTCOM) / AFP 〔AFPBB News

 米軍が公開した映像から、専門家はイランの革命防衛隊が使用するボートと同じだと指摘しています。

 また、偵察能力の露見となるため、米軍はそこまで公表していませんが、公開された映像のその後を、米軍が追いかけていないということはあり得ません。回収を行った小型ボートを追跡し、どこの港、基地に向かったかまで確認したことは間違いないでしょう。トランプ大統領は、イランの仕業だと発言していますが、この回収に使われたボートの追跡結果を踏まえての発言だと思われます。