上記のMMT批判論者達は、そんなデフレの凄まじい恐怖を全て度外視し、インフレになることを過剰に恐れて、今のままのデフレでいいのだと考えているわけだ。つまり彼らのメンタリティは、「ガリガリにやせ細った栄養失調状況にあり、あらゆる体調不良が顕在化しているにも関わらず、肥満になってしまうことに過度に怯えて、ほとんど何も食べられなくなっている拒食症患者」のそれと全く同じなのだ。このまま彼らの言いなりになっていては、早晩、そんな拒食症の人間が命を落としてしまうように、我が国はもう取り返しのつかない状態にまで衰退していくことは避けられないだろう。

日本はMMTで「制御できないインフレ」にはならない

 しかも、その「制御できないようなインフレになるかもしれない」という話自体もまた、文字通りの杞憂に過ぎない代物だ。

 そもそも、上記に紹介した記事中で中野氏が指摘しているように、制御不能なインフレになるのは、戦争や大地震によって生産能力が著しく破壊されるといった、極端なケースの場合に限られる。そういう極端ケースでは激しいモノ不足が生じ、モノの値段が激しく上昇するのだが、そうでもない限り、そんな極端なモノ不足が、十分な生産能力を持った先進諸国の一翼を担うこの日本で起こることなどあり得ない。実際、制御不能なインフレに陥ったのは、ジンバブエやザイール、ベネズエラなどの、生産能力が十分存在しないいわゆる発展途上国に限られているわけだ。

 この点を考えると、「制御不能なインフレが怖いから、何もしない方がよい」というMMT批判のメンタリティは、「あらゆる食べモノには毒が入っているかもしれない――という絶対にあり得ない病理的な思い込みが頭から離れず、何もモノが食べられなくなってしまった神経症患者」の様なものなのだ。

「有りもしない亡霊」におびえ続ける愚を避けよ

 この様に、現時点で、最も典型的なMMT批判である「インフレ制御不能」批判なるものは、

 第一に、日本は財政を拡大したり縮小したりする能力を実際に持っていると言う点で、MMTに対する不当な言いがかりに過ぎないのであり、

 第二に、MMTは別に財政政策だけでインフレ率を制御すべしなどとは一切言っていないに関わらず、MMTはさもそう主張しているかのような印象操作を図っていると言う点において、MMTに対して不当な濡れ衣を着せるものであり、

 第三に、制御不能なインフレになど、十分な生産能力を持つ先進経済大国である日本が陥る筈等あり得ない、と言う点で、単なる「妄想」にとりつかれた、著しく不条理な批判に過ぎないのであり、

 そして第四に、何もせずにデフレを放置し続けることは、現在、そして将来の日本国民に激しい被害をもたらすという現状認識を一切忘れていると言う点で、甚大なる被害をもたらす恐るべき無責任発言に過ぎないのである。

 つまりMMTに対する「インフレ制御不能」批判は、これだけ多面的に完全論破される批判も少ないのでは無いかと思えてしまうほどに、お粗末極まりない代物なのである。

 だから政府は今、何を恐れることも無く、合理的な支出項目とは何かをしっかりと考えながら、デフレ脱却までは粛々と政府支出を拡大すればそれで良いのである。わが国はもうそろそろ、過剰インフレというありもしない亡霊に怯えて政府支出を抑制し続ける愚をやめねば、取り返しのつかない最悪の状態に立ち至ることになろう。

 一日も早く、為政者達による賢明なる政治判断が実現されんことを、心から祈念したい。