米国側の一連の世論調査では、日本は「信頼できる国」「好ましい国」「重要な国」といったカテゴリーで常にトップに近い数字を集める。その結果、米国の安全保障政策においては、対日同盟関係の堅持という政策オプションへの支持が顕著に高くなる。トランプ大統領が問題視する、日本に対する貿易赤字や日本の市場閉鎖性への非難も、米国の一般国民レベルではきわめて穏やかである。
国政レベルでみても、米国歴代政権の対日政策はきわめて広範な超党派の支持を得てきた。日本とは同盟を保ち、経済関係を緊密にして、国民レベルでは友好や交流を深める、という基本路線が、共和党からも民主党からも堅固な支持を得てきたのだ。だからトランプ政権をいつも糾弾する民主党勢力も、政権や大統領の日本重視の基本姿勢は決して批判しない。トランプ氏が安倍氏に特別に親しく接しても、そのこと自体を批判する民主党勢力はほとんどいないのである。
【4】危険な東アジア情勢
第4には、東アジアの国際情勢である。
米国は中国との対立を鮮明にするようになった。北朝鮮に対しても、かつての米国政権にはない厳しさで核兵器の破棄を要求し対決しようとしている。トランプ政権のこうした姿勢の帰結として、日本との同盟関係の重要性がますます浮かび上がっている。
また、中国が南シナ海や東シナ海で軍事攻勢を強め、台湾に対しても軍事手段をちらつかせての恫喝を繰り返している。トランプ政権はそんな中国の膨張的な動きに対して、軍事面での対決も辞さずという姿勢で反発する。その際の軍事抑止力保持のための最も重要なポイントとして日米同盟の存在が一段とクローズアップされる。
トランプ政権にとって、対中政策でも対北朝鮮政策でも、最悪の事態を想定して、軍事力の行使を考えておかざるを得ない。その際に最も重要となり、最も頼りになるのが日米同盟であり、その結果としての在日米軍の抑止力である。だからこそ日本との良好で緊密な関係の保持が改めて不可欠となってくる。いまの米国にとって、日本を取り巻く東アジアの危険な情勢が、日本との絆の再強化を不可欠にしているというわけだ。
こうみてくると、安倍・トランプ両首脳の、ときには異様にみえるほどの緊密さも、それなりに正当な理由があっての現象だということが分かる。日本にとっては、首脳同士の緊密さを日本の政策に前向きに活用することが十分に可能だし、積極的に活用すべきであろう。