安倍氏のこうした努力については、米側でもウォール・ストリート・ジャーナルが「安倍首相は、日本がいま直面する東アジアの厳しい国際情勢に対して、米国との同盟の堅持と強化がなにより必要なことを十二分に意識していた。それゆえのトランプ大統領への接近だった」と論評していた。
【2】個人レベルで互いに好感
第2は、トランプ大統領が個人レベルで安倍首相に好感を抱いたことである。
好感や嫌悪感というのは客観的な定義が難しい言葉である。だがトランプ氏が、最初の面会から安倍氏と語ること、時間をともに過ごすことに快適さを覚えたという事実は明白だった。
私自身、安倍・トランプ会談の場にいて、その様子を目撃した日米双方の当事者たちから、「トランプ氏は安倍氏と一緒にいると気分が良いことは明白」という話を何度も聞いた。今回の両首脳の顔合わせでも、一緒にゴルフをして長い時間をともに過ごしたこと、トランプ氏が中西部での遊説からの帰途、安倍首相との会談に遅れないよう専用機の飛行を急がせたこと、首脳会談途中に自分専用のトイレを使うよう安倍氏に奨めたことなど、トランプ大統領の安倍首相への「好感」を表わすエピソードが多い。
そのうえ、大統領が自分の夫人の誕生日会に外国の首脳夫妻を招き入れるというのも、破格の扱いだといえよう。この種のもてなしは、トランプ大統領にとっては普通ならしなくてよい異端の優遇なのである。同大統領の個人的な心情や気持ちがあるからこそ安倍夫妻を招待したのだろう。
一方、安倍首相の側にもこの種の個人レベルの好感があることは否定できない。そもそもトランプ、安倍両氏はトランプ氏の「アメリカ第一」という政策標語に象徴されるように、国家の主権や独立、歴史や伝統を重んじる点でかなり共通度がかなり高いといってよい。
【3】きわめて良好な日米関係
第3の要因は、日米関係全体の現在の良好さである。
首脳同士がいくら親密になろうと願っても、国家同士が対立や敵対の関係にあっては限度がある。その点、近年の日米関係はきわめて良好な状態にある。とくに私自身がワシントンに駐在していて実感する米側の国政、そして草の根での日本観は、ここ数年、かつてないほど良好なのである。