(福島 香織:ジャーナリスト)
2019年4月10日は、米国が台湾関係法を制定してからちょうど40年目にあたる。その前日の4月9日、ワシントンでは、米国の著名シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)などが主催する討論会に台湾の蔡英文総統がインターネット中継で出席したことが話題となった。
蔡英文は「台湾化関係法は米台が共同で太平洋地域の平和と安全安定を維持するためだけでなく、台湾の自主防衛能力を発展させ、いかなる脅威恫喝にも対抗できるようにするもの」と語り、近年強まる中国からの軍事圧力に対抗するために台湾関係法がさらに重要になっていることを強調した。
さらに、3月11日に起きた中国戦闘機による台湾海峡中間線越えの問題について、「台湾の民主と自由に対する挑発であり、台湾は体を張って抵抗しなければならない」「台湾は自前の兵器製造の方法がなく、台湾関係法に基づき、米国からの兵器購入を継続していく」と述べ、米国に武器売却を要請した。
蔡英文は政権発足当初、中国に対してはかなり慎重で遠慮した姿勢を維持していた。それは、中国との関係を悪化させずに現状維持を心掛ける蔡英文の「事なかれ主義」的性格からくるものとして、民進党支持者からは評判が悪かったのだが、今年になって蔡英文自身が積極的に台米関係強化をアピールし、中国の恫喝に対しても徹底抗戦する姿勢に転換してきている。
背景には、言うまでもなく2020年早々に予定されている台湾総選挙必勝の決意がある。この総選挙で民進党が政権を死守できるかどうか、それが台湾の未来を大きく左右する。そして、この台湾情勢が米中の地域覇権をめぐる対立の重要カードになるのだから、今年(2019年)の台湾海峡は否が応でも荒れ模様なのだ。
台湾との距離感を変え始めたトランプ政権
今年、米中台の間で高まる緊張は、過去の台湾海峡危機とは本質的に違うと思われる。
1995~96年の第3次台湾海峡危機では、中国の江沢民が打ち出した台湾政策に対して台湾の李登輝が真向から拒否を示し、これに怒った江沢民が台湾海峡でのミサイル試演という恫喝を行った。だが最終的には米国が空母艦群を派遣し、中国を牽制し、沈静化させた。