3月11日、人民解放軍の2機の「殲11」戦闘機が台湾海峡中間線を超えて飛来し、これに応じてスクランブル発進した台湾の経国号、F16A、F16Bと約10分にわたり対峙した。中国軍機のこの行動は、これまでの中国の対台湾挑発レベルを大きく超えてきている。まるで偶発的に何かが起こることを期待しているようでもあった。

 中国の環球時報は「台湾の基地をピンポイントで攻撃する可能性も排除できない」と爆撃の可能性に言及した。米国防省情報局の中国軍事力に関するリポートでも、中国が自国軍事力に対し相当の自信を深めているため、直面する諸問問題を軍事力で解決しようとする選択肢を取りうる、との台湾を念頭においた指摘がされている。

台湾、独自開発の無人偵察機を初公開 中国との緊張高まる中

台湾・空軍屏東基地で軍事演習中に公開された無人偵察機「鋭鳶」。台湾海峡での監視任務に投入されている(2019年1月24日撮影)。(c)SAM YEH / AFP〔AFPBB News

国民党が政権をとったら何が起きるのか

 こうした緊張感の中で、「官僚的事なかれ主義」といった批判もあった蔡英文が、明確に米国接近に舵をとり、中国との対峙姿勢を打ち出した。それは総統選出馬を決意した段階から明確になった。

 2020年1月に予定されている総統選挙の民進党候補は、現職の蔡英文、前行政院長の頼清徳が名乗りを上げている。いずれが選ばれるかは、国民党の候補を眺めながら民意調査を反映させて決められていく模様だが、1つだけ言えるのは、民進党としては絶対勝てる候補を選ばなければならない、ということだ。

 というのも、次の総統選で国民党が政権をとれば、おそらくは「中台平和統一」のシナリオが一気に進むことになるからだ。

 国民党の呉敦義主席はすでに「国民党が勝てば中国との和平協議に調印する可能性がある」と述べている。これは、ある程度、世論も反映した考え方だ。台湾の民間シンクタンク・台湾競争力フォーラム学会と新時代知庫の民意調査(3月22日発表)によれば「両岸(中台)和平協議署名を支持する」という意見は44.8%で、不支持33.4%を大きく超えている。また、「和平協議署名が台湾経済にプラスとなる」と答えたのは59.8%で、反対意見の28.5%を大きく超えた。また61%が「和平協議署名は両岸緊張関係を緩和する」としており、73.2%が「国際組織の監督下で和平停戦協議の署名を行えばいい」と答えている。