(福島 香織:ジャーナリスト)
中国のエリート養成機関「共産主義青年団(共青団)」が2022年までに延べ1000万人の学生たちを農村に派遣する計画を打ち出したことが、毛沢東時代の“上山下郷”運動の再来か? と物議を醸(かも)している。
習近平国家主席が第19回党大会の政治活動報告で打ち出した「郷村振興計画」に呼応した方針のようだが、文革時代のトラウマをいまだ抱える知識人層には大不評。習近平はかねてから共青団に対して辛辣な批判を公表し“共青団”つぶしに動いていたので、権力闘争ではないかという見方もある。一体、この“新・上山下郷”運動の狙いはどこにあるのだろうか。
ネットは大騒ぎ、知識人たちも敏感に反応
通達は3月22日付けで中国共産党中央から「郷村振興精神建功を深く展開することについての意見」という紅頭文件として出された(紅頭文件は、共産党の権威ある重要通達である。赤い文字で表題が書かれているため紅頭文件と呼ばれる)。
この通達が4月11日に一部中国メディアで報じられると、「大変だ! 国家が3年内に1000万人以上の青年を下放する計画を発表した」「“上山下郷”再び? 中国共産党が1000万人の青年を農村に動員!」「文革の“上山下郷”! 運動が再び!」といったコメントが相次ぎ、ネット上では大騒ぎになった。
文書に使われた「三下郷」という言葉が、まさに「上山下郷」に共通する印象であること、そして習近平政権の折からの“文革回帰”を臭わせる発言や政策に、文革時代に迫害された知識人たちが敏感に反応したのだ。
この反応に共青団はあわてて、「三下郷と下郷は違います」「通達の全文を読んでください!」と反駁していた。
「短期ボランティア」で農村振興を
通達の内容を整理すると、以下のような6大計画を展開するという話になる。
(1)農村の人文環境向上プロジェクト:農村の共青団思想政治、指導工作の価値を強化・改善し、文明的で良好で純朴な農民の風紀を育成し、農村の物質文明、精神文明を向上させるために、2020年までに累計10万人以上の青年を参与させる。