部下はあなたと違う。あなたはライオンでもゾウでも、そして部下でもない。違うのだから、「自分と同じように考える」ことを期待しないこと。

 それよりも、「この人は自分とどこが違うんだろう?」と、「違い」を積極的に楽しむようにした方がよい。そこにマインドセット(心構え)すると、自分と違う考えに出会ってもガッカリすることはなくなり、むしろ違いを楽しみ、驚けるようになる。「ああ、そういう考え方もできるのか! 自分だとこんなふうには考えないな」と。

 部下は、自分の発想に驚き、面白がる上司の様子を敏感に察知する。すると、「自分なりの考えでかまわないのだ」と安心するようになり、萎縮して動きの悪かった思考が、いきいきと躍動し始める。

 思考は他人(部下)に任せよう。違うことを面白がり、驚こう。「他人(部下)の分まで考えない」「違い、工夫に驚く」の2つが、部下の意欲と思考を刺激する。

 目指す上司像は、「赤毛のアン」のマシュー、「アルプスの少女ハイジ」のクララのおばあさん。

 マシューは、アンの成長を自分のこと以上に喜び、アンが悲しんでいるとオロオロする。ただそれだけ。それでもアンにとって、マシューは、能動的に学び、努力する動機だったのではないだろうか。自分が成長することで、マシューを「驚かせたい」と。

「わたしはABCも分からないの」としょげているハイジに、クララのおばあさんは、アルプスの山々を思わせるきれいな挿絵の本をプレゼントする。すると、そこに書かれていることを知りたくて、ハイジは主体的に学びだした。それも、家庭教師が信じられないほど、驚異のスピードで。おばあさんはその様子をニコニコ見ているだけ。

 マシューもクララのおばあさんも、にこやかに見守り、話を聞き、成長に驚き、喜んでいるだけ。一見、主体性もなく、何もしていないかに見えるこの2人が、私には理想の指導者像に見える。